可能な限りエンジン版へ似せる BMW i5 M60 プロトタイプへ試乗 ブーストボタンで598ps

公開 : 2023.05.10 08:25

ブースト機能で最大10秒間598psを発揮

軽くアクセルペダルを傾けている限り、駆動用モーターは線形的で滑らかにパワーを発揮。優雅とさえ感じる流暢さで、安楽にクルージングできる。

右足へ力を込めると、息を呑むダッシュ力が放たれる。ほぼ無音状態で。i5には、内燃エンジンのエグゾーストノートを模した合成音の再生機能も備わるが、乗り手によって必要性は異なるだろう。

BMW i5 プロトタイプ
BMW i5 プロトタイプ

ドライブ・セレクターがDの時は、回生ブレーキは最小限。アクセルペダルを放すと、スルスルと惰性走行する。Bを選ぶと回生ブレーキが明確に効くようになり、ブレーキペダルを踏まずとも停止までできる、ワンペダルドライブが可能だ。

ステアリングホイールにはパドルが装備され、そこにはブーストと記されている。指で軽く弾くと最大10秒間、598psの本領が発揮される。メーターパネルに残り時間が表示される、カウントダウン機能も付く。

出だしは強烈。速度域が上がっても、相当にたくましい。必ずしも運転の楽しさに直結するわけではないとはいえ、すこぶる速い。

試乗車のi5 M60には、BMWアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルと呼ばれるパッケージが選ばれていた。フロントはスチールコイル、リアがエアスプリングに、アダプティブダンパーが組み合わされる内容だ。

更に、ボディロールを電子的に制御するオプションも搭載されていた。こちらは、ダイナミック・ドライブと呼ばれる。

テールを振り回せるリアアクスル主軸の特性

スポーツ・モード時は、操縦性は極めてニュートラル。フロントタイヤのグリップ力と低い重心位置により、i5は素晴らしい敏捷性を披露してみせた。

コーナーでは、早期のアンダーステアに見舞われることも皆無。緩いコーナーを、高い速度域を保ったまま不安感なく旋回できる。優れたトラクションと即時的なパワー展開を活かし、アクセルペダルでの姿勢制御も可能だ。

BMW i5 プロトタイプ
BMW i5 プロトタイプ

ステアリングラックは可変レシオ。BMWらしい適度な重みが伴い、特に切り初めの精度は秀逸。フィードバックも充分にある。

アクティブ後輪操舵システムを搭載し、リアアクスル側も回頭性をアシスト。連続するカーブを滑らかにこなす流暢な身のこなしと、クルマとの一体感を高めるコミュニケーション能力を備えている。チャレンジングな道でも、自信を持って操れる。

スタビリティ・コントロールの介入を遅くすると、リアアクスル主軸の特性が顕に。タイトコーナーでは、存分にテールを振り回すことも難しくない。条件が許せば、グリップ力を打ち破る太いトルクで、派手なドリフトに興じることもできそうだ。

乗り心地にはコシがあるが、ダンパーの吸収能力は高く、うねりを越えても揺れが残ることはない。横方向のロールや縦方向のピッチングも、しっかり抑制されている。高速域でもボディはフラットに保たれていた。

荒れた舗装ではロードノイズが大きめに響くものの、耳障りなほどではない。洗練性は高いといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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