ボルボ電動化の今 XC90/XC60/XC40 長距離試乗で探る

公開 : 2023.04.30 17:00

ボルボは2020年末までに、国内全ラインナップの電動化を終了させました。今回はXC90/XC60/XC40を試乗し、ボルボの現在を読み解きます。

数字で見るボルボの電動化

2020年末までに、日本で販売される全てのモデルの電動化を完了させたボルボ。その後も「リチャージ」と括られるPHEVの性能強化やBEVの販売拡大など、ゼロエミッションに向けてのたゆまぬ進化を続けている。

その甲斐もあってのことだろう、昨22年、SUVのXC60シリーズとXC90シリーズは共に導入以来最高の販売台数をマークしたという。

XC60のT6 AWDとXC90のT8 AWDという2台のPHEVを中心にXC40のMHEVとBEVを織り交ぜつつ、長時間/長距離を共にしながら、パワートレインが更新されたボルボのSUVの魅力を改めて探った。
XC60のT6 AWDとXC90のT8 AWDという2台のPHEVを中心にXC40のMHEVとBEVを織り交ぜつつ、長時間/長距離を共にしながら、パワートレインが更新されたボルボのSUVの魅力を改めて探った。

特にフラッグシップでもあるXC90は導入から7年になろうとするところでの記録更新だ。聞けばその全数のうち32%、ほぼ3台に1台がPHEVだという。

そして昨年4000台以上を販売したXC60も全数の20%がPHEVと、その割合は同級のライバルに比べると明確に高い。

今回はXC60のT6 AWDとXC90のT8 AWDという2台のPHEVを中心にXC40のMHEVとBEVを織り交ぜつつ、長時間/長距離を共にしながら、パワートレインが更新されたボルボのSUVの魅力を改めて探ってみた。

まずはボルボXC60に試乗

まず乗ったのはXC60だ。T6 AWDは登場当初、2l4気筒直噴ユニットにターボとスーパーチャージャーと過給器を2丁掛けにして320ps/400Nmのアウトプットを達成、それを旧ハルデックスカップリングを介した4WDで駆動するというオーソドックスな構成だった。

現在のT6 AWDは253ps/350Nmをマークする2L 4気筒直噴ターボに加えて、前側に52kW/165Nm、後ろ側に107kW/309Nmの電動モーターを配し、ドライブシャフトを持たない電動4WDを実現している。

ボルボXC60リチャージ・アルティメイトT6 AWDプラグインハイブリッド
ボルボXC60リチャージ・アルティメイトT6 AWDプラグインハイブリッド

駆動用のリチウムイオンバッテリーは直近のマイナーチェンジで18.8kWhに強化され、満充電からのBEV走行はWLTCモードで81kmと従来から2倍以上延伸された。

これだけの距離を刻むことができれば、平日の日常的用途をモーターのみでカバーすることはたやすいだろう。

XC60とXC90は同じスケーラブルアーキテクチャーを用いているが、走りのキャラクターは意外なほど異なっていて、ひと回り車格の小さいXC60の側は想像通り機敏さや快活さを押し出している。

が、今回試乗したXC60のグレードは最もスポーティなRデザインの後継的な位置づけも担うアルティメイトで、装着タイヤも大径の21インチを履くも、その乗り心地の洗練ぶりに感心させられた。

特にバネ下の大きさを持て余さない中高速域でのしなやかで高精度なフットワークは、プレミアムDセグメントのライバルの水準に照らしても、ほぼ見劣りがない。

快活という点においては後輪側モーターの駆動力が高まり、加速やハンドリングもその蹴り出しによって新たなキャラクターを得ている点が興味深い。旋回時のアンダーステアはほぼ感じられず、ゆっくりとアクセルを踏み増していくとじんわりとイン側に引き寄せられるような挙動が現れる辺りは、内燃機とモーターの共生による楽しさの可能性を感じさせてくれる。ちょっと雪道に誘われそうなドライバビリティだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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