ボルボ電動化の今 XC90/XC60/XC40 長距離試乗で探る

公開 : 2023.04.30 17:00

XC90 変化を決めた旗印

対すればXC90の挙動は重さや大きさを感じさせるもので、その車格による据わりの良さにAWDらしいスタビリティも加わり、高速道路を淡々と走り続けるような使い方でその真価を発揮するのは従来どおりだ。

パワートレインはモーター及びバッテリーの構成がXC60 T6 AWDと一緒だが、2L 4気筒直噴ターボユニットの側が317psまでパワーが高められており、低中回転域を中心としたモーターの力強いアシストと相まって2.3tを超えるボディをストレスなく加速させる。満充電からのBEV走行はWLTCモードで78kmと、XC60 T6 AWDと大差はない。

ボルボXC90リチャージ・アルティメイトT8 AWDプラグインハイブリッド
ボルボXC90リチャージ・アルティメイトT8 AWDプラグインハイブリッド

どちらにしても、家や通勤先などの定置場所に普通充電器があれば、ガソリンを使わずとも日常生活をカバーする能力を有している。

XC90の美点はきちんと使える3列シートを有する真面目なパッケージングにも現れている。内装の仕立てや質感はさすがに目慣れた感があるが、目的なき変化は良しとしないところもまたボルボの良心でもある。

ポールスターのようにスピンアウトしたブランドに革新を託すなら、ボルボの軸足はオーセンティックの側にあるということなのだろう。

先に発表されたBEVのEX90にもそんな意向は感じられる。一方で、変わると決めた時には徹底的にやるのもボルボの凄さで、その旗印となってきたのが現世代のXC90でもあるわけだ。

キャラクター強調 XC40

XC40は現在のボルボのSUVラインナップでは最も若く、最もアグレッシブに変節を遂げてきたモデルでもある。現在のラインナップは48V MHEVがシングルモーターのB3とツインモーターAWDのB4。そしてBEVがシングルモーターFFとツインモーターAWDが用意されているが、BEVは24年型からリア置きシングルモーターの後輪駆動となるため、現在のラインナップは在庫販売のみとなるようだ。

今回はMHEVもBEVも共にツインモーターの側を試乗したが、150kW(204ps)/330Nmのアウトプットを持つモーターを前後に2丁掛けするBEVの動力性能はさすがに強烈で、0-100km/h加速5秒切りという発表値以上の猛進ぶりを思わせる。ちょっとエクストリーム的な速さだ。

ボルボXC40リチャージ・アルティメイト・ツイン・モーター
ボルボXC40リチャージ・アルティメイト・ツイン・モーター

他社に先駆けてBEVへの置き換えを宣言しているボルボとしては、やれることをみせておきたいという可能性を強調するようなキャラクターに躾けたのだろう。

この速さを破綻なく躾けてある辺りは見識を感じるが、恐らく24年型からのシングルモーターでもまったく不足なく日常をカバーしてくれるはずだ。

3車に共通して感心したこと

今回、ボルボのSUVで長い時間を過ごして、共通して感心したことが2つある。1つはインフォテインメントのベースに採用されたアンドロイドOSだ。

いわずもがな、グーグルのプラットフォームを担うそれは、「OKグーグル」のボイスコマンドと共に音楽の再生やナビの目的地設定など、主要なコマンドがかなりの確度で反映される。

対話型AIをベースにしたシステムを独自構築するブランドもあるが、やはり分母に乗じたグーグルのアンドロイドOSは洗練度が一枚上手だ。
対話型AIをベースにしたシステムを独自構築するブランドもあるが、やはり分母に乗じたグーグルのアンドロイドOSは洗練度が一枚上手だ。

メルセデスやBMWレクサスなど対話型AIをベースにしたシステムを独自構築するブランドもあるが、やはり分母に乗じたグーグルのそれは洗練度が一枚上手だ。

もう1つはシートの掛け心地の良さだ。最上級のXC90は言うに及ばずだが、それに準ずるホールド感や体圧分布などの勘どころをXC40でもきちんと反映できているところが立派だ。

2日間、朝から夕方までほぼ運転し通しの頭や体がピンシャンしていたのは、振り返るとこのデジタルとアナログの2点によるストレスフリー環境が大きかったように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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