印象的なBEVサルーン ヒョンデ・アイオニック6 ベスト・カンパニーカー:AUTOCARアワード2023

公開 : 2023.05.12 08:26

前年を振り返り、各カテゴリーでのベストを称えるAUTOCARアワード。見事、2023年に受賞した栄えある10台をご紹介します。

空力特性を追求した最先端のBEVサルーン

高完成度なアイオニック5に続いて、ヒョンデがリリースしたバッテリーEV(BEV)が、サルーンのアイオニック6。まず何より、見た目で我々を驚かせてくれた。

ヒョンデはスタイリングで高い評価を集め始めている。ハンサムな新モデルが次々に登場しているが、デザイン部門を率いるイ・サンヨプ氏の才能は、急成長を遂げるBEVにもいかんなく発揮されている。

ヒョンデ・アイオニック6(英国仕様)
ヒョンデ・アイオニック6(英国仕様)

確かに、アイオニック6の流線型フォルムには、ひと癖ある。そのかわり、当たり障りのない退屈なデザインとは明らかに違う領域にある。

アイオニック5は、クロスオーバーとは見えないスタイリングにレトロ・フューチャー的な要素を盛り込み、新しいブランドイメージの構築に貢献した。少なくない販売台数へ結びついている。

続いて登場したBEVは、トラディショナルなサルーンだった。近年の多くの自動車メーカーが、SUVを重視するなかで。

アイオニック6は、ある断面を見れば新しいとはいえない。しかし、空力特性を追求したスタイリングは特徴的で、電圧800Vという、高性能な電動アーキテクチャを実装する。

駆動用バッテリーは大容量で、急速充電能力は高い。エネルギー効率にも秀でており、航続距離はクラス最長。最先端のBEVサルーンだといえる。

空気抵抗を示すCd値は0.21に抑えられ、可能な限り遠くを目指せることが追求されている。大きなバッテリーで車重が増え、ボディも大きくなるという、近年のBEVで起きがちな悪循環から距離をおいている。

SUVが並ぶ駐車場で素晴らしい主張になる

俯瞰してみれば、2017年に発表されたテスラモデル3が、ひと足先にそれを叶えていた。ツインモーターでロングレンジのモデル3の場合、アイオニック6より58kmも長い航続距離を実現している。我々も、それを高く評価してきた。

一方のアイオニック6のデザインは、モダンでエネルギッシュ。モデル3にはない、温かみや優れた人間工学も備わる。

ヒョンデ・アイオニック6(欧州仕様)
ヒョンデ・アイオニック6(欧州仕様)

加えて、ドライビング体験には親しみやすさがあり、従来的なクルマへ近い。ステアリングの反応は穏やかで、乗り心地は優しい。パワートレインの反応も、量産メーカーに期待する通りのまとまりがある。

もっとも、ヒョンデが推す20インチ・ホイールの場合、荒れた路面での乗り心地には少しの難がある。韓国で提供されている18インチ・ホイールを、英国でも選べるようになれば、と思う。

航続距離も612kmへ伸びる。空力特性を追求し、エネルギー効率を高めたのなら、1kmでも長い距離を走りたいところだ。

今回アイオニック6は選ばれたのは、英国では一般的な、会社からの貸与車両のベストとして。SUVばかりが並ぶオフィスの駐車場にあって、滑らかなフォルムで身を包んだBEVの4ドアサルーンは、素晴らしい主張になると思う。

航続距離は充分あり、毎日の通勤を不安なくこなせる。リアシートが広く、同僚を乗せても困らない。休日には、楽しいドライビング体験も享受できるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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