クルマの認証不正、なぜ起こるのか? 日野に次いでダイハツも 「開発」「実験」を取り巻く課題
公開 : 2023.05.01 18:05 更新 : 2023.05.01 18:37
日本向けモデルの不正は?
実際、今回の記者会見でも最初、ダイハツ側の説明がしっかり理解できない記者がいて、複数の記者の質問の末、ダイハツ側は「(ドアトリムが)割れた後にシャープエッジ(尖った形状)にならないように不正をしたと考えられる」と、詳細な説明をした。
つまり、乗員を守るためには、直接的な衝撃力に対してではなく、ドアトリムなどが乗員を負傷させないことも、認証の審査を合格するためのキーポイントということだ。
こうした認証不正が確認されたのは、海外向けモデルのみ。
タイとマレーシアで生産され、エクアドル、メキシコ、中近東各国を含めた世界各地にも輸出されている小型セダンのトヨタ「ヤリス・エイティブ」と、インドネシア生産でエクアドルなどに輸出される、小型ハッチバックのトヨタ「アギラ」。
こうしたダイハツが開発してトヨタブランドとしてトヨタが製造するモデルを、OEM(相手先ブランド)供給と呼ぶ。OEM供給では、開発だけではなく製造も行い、それをOEM契約先に納入する場合もある。
もう1つの認証不正対象モデルは、ダイハツとマレーシア地場メーカーとの合弁事業であるプロデュアの小型ハッチバック「アジア」。さらに“開発中”の1モデルを含めた、合計4モデルだ。
日本向けモデルでの認証不正について現時点では「ない」としている。
どうして認証不正は起こるのか
では、どうして認証不正が起こってしまうのだろうか?
今回の会見でダイハツ側は「担当者にプレッシャーがあったものと考えられる」と説明している。
このプレッシャーとは、認証の審査を“一発合格させる”ためということらしい。
衝突試験では「実車」を使うため、その準備やコストなどを考えると一発合格を目指すのは当然のことだろう。
だが、ここで疑問なのは、事前の社内テストやシミュレーションでは、今回のようなスリットを入れる加工をしなくても、十分に認証審査を合格できる状態にあることがダイハツの社内調査で分かったという点だ。
いずれにしても、「開発」と「実験」という部署と、それを社内で監査するような立場にある「認証」担当部署が同じ組織内にあるという、ダイハツの衝突安全に関わる組織体系に課題があることは明らかだ。その点について、ダイハツ側も改善する意向を示している。
さらに、同じくトヨタグループである日野では、2000年代から様々なエンジン不正が定常化していたことについて、特別調査委員会が「企業風土の問題」と言い切り、日野は企業風土の変革に取り組んでいる真っ最中だ。
今回のダイハツ会見の後、トヨタの豊田章男会長はトヨタグループ全体に対して、企業風土、ガバナンス、そしてコンプライアンスの再認識を求める姿勢を示した。