SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 ラリー プライベーターの獅子 前編

公開 : 2023.05.14 07:05

軽く手頃なホットハッチとして支持を集めた、往年の小粒なプジョー。3世代続いたラリー仕様を、英国編集部がご紹介します。

プライベートチームの支持を集めた205 ラリー

普段乗っているのと同じ見た目のハッチバックが、ラリーのスペシャルステージ(SS)を目一杯駆け回っていた時代があった。砂利を弾き飛ばし、水しぶきを撒き散らしながら。そんな様子に憧れて、ロータリー交差点を旋回した読者もいらっしゃるだろう。

特に実戦と近い内容にあった1台が、ホットハッチ以上のハードコアさを備えた、1988年のプジョー205 ラリーだ。その人気は熱く、目標とした5000台を簡単にクリアしただけでなく、106と306にも派生モデルを生み出した。

ホワイトのプジョー205 ラリーと、ブラックの106 ラリー、レッドの306 ラリー
ホワイトのプジョー205 ラリーと、ブラックの106 ラリー、レッドの306 ラリー

世界ラリー選手権のために、プジョーは205 ターボ16というホモロゲーション・マシンを開発。しかし市販は200台と極めて限定的で、市民の手に届く価格帯のモデルではなかった。

走りには余計なものを省き、1294ccエンジンを搭載した205 ラリーは、205 GTiより更に安価な約1万6000フランへ設定。生産の規定数も上回り、グループAとグループNの1300cc以下クラスへ見事に合致していた。

スバルインプレッサ WRXを投入し、ターボチャージャーと四輪駆動で席巻したのは1990年代半ばに入ってから。それより先に、ラリーを民主化したモデルといえる。

予算に厳しいプライベートチームの支持を集め、公道だけでなく週末のラリーイベントでも活躍を披露。新設されたプジョー・タルボ・スポーツ部門によるモータースポーツ活動が、販売での成功を導いた結果といえた。

プジョーとタルボ、スポーツを示すトリコロール

タルボ・サンビーム・ロータスやグループBの205 ターボ16が暴れまわった、世界ラリー選手権とパリ・ダカール・ラリーなど、戦果には事欠かない同部門。205 ラリーは、技術力が直接的に反映された熱々の市販モデルといえた。

目印といえたのが、ホワイトに塗られたボディ。プラスティック製のオーバーフェンダーが、控えめにワイルドさを主張した。プジョーとタルボ、スポーツを示す、前後に彩られたレッドとイエロー、ブルーのトリコロールカラーがアクセントだった。

プジョー205 ラリー(1988〜1992年/欧州仕様)
プジョー205 ラリー(1988〜1992年/欧州仕様)

派手なスポンサー・ステッカーが貼られていなくても、今でもラリーカーに近い雰囲気を漂わせる。アヴァンギャルドなフォントで記された205 ラリーのロゴも、ファンの気持をくすぐったはず。

見た目だけでなく、中身もちゃんと伴っていた。サスペンションとブレーキは、205 GTiと共有。ボンネットを開くと、TU24型の1.3L 8バルブ直列4気筒エンジンが姿を表す。

ツイン・ウェーバー・キャブレターに専用カムとマニフォールドで武装し、最高出力103ps/6800rpmを発揮。チューニング次第で、さらなるパワーアップも容易だった。

車内からは防音材だけでなく、パワーウインドウも省略。205 GTiより60kgも軽量化され、最高出力では18ps及ばなかったが、パワーウエイトレシオでは勝っていた。タイヤは20mm広い13インチの165。威勢のいい走りをしっかり受け止めた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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