SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 ラリー プライベーターの獅子 後編

公開 : 2023.05.14 07:06

軽く手頃なホットハッチとして支持を集めた、往年の小粒なプジョー。3世代続いたラリー仕様を、英国編集部がご紹介します。

205 ラリーと同じ1294cc直列4気筒

プジョー205 ラリーの人気を受け、交代するように1993年に106 ラリーが登場。期間は2年と短いが、1万6500台が提供された。英国には約1000台しか割り当てられず、すぐに完売となったが。

プジョー106の登場は1991年だが、スタイリングに目新しさは少なかった。空気抵抗を示すCd値は0.31へ抑えられ、モダンさは得ていたものの、205のフェイスリフト版に見えなくもなかった。

ホワイトのプジョー205 ラリーと、ブラックの106 ラリー、レッドの306 ラリー
ホワイトのプジョー205 ラリーと、ブラックの106 ラリー、レッドの306 ラリー

それでも、シャシーはまったくの新設計。プジョーも強調したポイントではある。

106 ラリーに搭載されたエンジンは、1294ccの直列4気筒。205 ラリーと同じユニットながら、大幅に改良を受けていた。

キャブレターから燃料インジェクションへ改められ、新しいマニフォールドを獲得。シリンダーヘッドは106 XSiの1.4Lユニットから流用し、圧縮比は10.2:1へ上昇された。最高出力は101psで、205 ラリーから若干ダウンしている。

それでも、1996年にGTi フェイズ2が登場するまで、106 ラリーは最強グレードとして君臨。1998年に1.6Lエンジンを積んだ106 ラリー・フェイズ2がリリースされ、その座を奪還している。

サスペンションは、スプリングが106 XSiと共通。アンチロールバーは直径の太い専用品が組まれ、ブッシュ類も強化されていた。

106 ラリーはプライベートチームから支持を集めつつ、最小クラスのホットハッチとして多くの若者を喜ばせてきた。今回ご登場願ったブラックの1台は、ミカエル・カイユ氏がオーナー。1995年式を2014年に購入したそうだ。

気性の荒いツインキャブの質感とは好対照

「イタリアやスペインで、ラリーのレッキ(下見走行)車両として乗られてきたようです。父も106 ラリーを所有していて、レースに出ているんですよ」。購入時はフランスに住んでいた彼は、2020年に英国へ移住。クルマも一緒にやってきた。

106 ラリーのドアを開くと、205 ラリーに似た車内が広がる。全体的に華奢な印象を拭えず、カーペットは派手なレッド。防音材が省かれたドアを閉めた音は明らかに軽く、車内空間を仕切る程度の役割しかない。

プジョー106 ラリー(1993〜1998年/欧州仕様)
プジョー106 ラリー(1993〜1998年/欧州仕様)

シートは硬めで、サイドサポートの立ち上がりは控えめ。シンプルなダッシュボードに対し、ドライビングポジションは低めだ。

燃料インジェクションだけあって、エンジンは1発で始動。穏やかなアイドリングに落ち着いた。205 ラリーの、少々気性の荒いツイン・ウェーバーの質感とは好対照。急につながるクラッチは共通している。

106 ラリーの運動神経の高さは、容赦ない身のこなしから伝わってくるが、乗り心地は柔らかい。ダイレクトでレスポンシブ。フロントからは、ハイリフトカムが組まれた1294ccユニットの荒々しいサウンドが響いてくる。

5速マニュアルのギア比は、205 ラリーと近い。短いホイールベースのシャシーと相まって、一層刺激的だ。

しなやかなサスペンションで、レーシングカー的な印象は角が丸められているが、路面の凹凸でもボディは安定性を失いにくい。滑沢にコーナーへ飛び込みたい気にさせる。ハイペースで気付くのが、ボディのソリッドさ。実際、205 ラリーより車重は嵩む。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 ラリー プライベーターの獅子の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事