Bクラスに「好感」を持てるワケ 改良新型B 200 dで見つけた、小さなメルセデス・ベンツの勘所

公開 : 2023.05.02 20:25

ポイントは「ゆとり」と「余裕」

ガソリンエンジンの3L級に相当する32.6kg-mの最大トルクを1400~3200rpmで発生。この大トルクを細かく繋いで回転数を抑えながら悠々としたドライバビリティを発揮する。

8速DCTを利して、1500~2500rpmで登坂・高速追い越しも含めた一般走行で必要とする加速力を賄う。変速制御もエンジンの特性を引き出すべく設定されているので、多少活発に運転しても3000rpm以上を使うことも少ない。

改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)
改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)    宮澤佳久

エンジンフィールもエンジン騒音も穏やかであり、最高出力から想像する以上にゆとりが感じられる動力性能だ。

俊敏な反応、回す程に力強くなる伸びやかさなどのスポーティな味わいを求めると魅力的とは言い難いが、長駆レジャー用途に適したパワートレインである。

良質な実用性能と信頼を生み出す余裕が“Bクラスのキャラ”にとてもよく似合っていた。

マイチェン型の乗り心地を分析

Bクラスがファミリー&レジャー用途に向けたモデルなのを実感する第1のポイントがキャビン。そして第2のポイントがフットワークだ。

Aクラスにも言えることだが、登場時の現行型に比べるとストロークのしなやかさが増しているが、Bクラスではとくにその印象が強い。重量・ドラポジも影響しているのだろうが、穏やかな乗り心地と確かな操安性が和みのドライブをもたらす。

改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)
改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)    宮澤佳久

ロール量は、実際にも体感的に大きめである。それが不安感に繋がらないのはサス設計の妙味。ロール開始時には抵抗感少なく、深くなれば粘り、揺れ返しも抑えられている。

旋回力の立ち上がりが穏やかで、ロールによる往なしが巧み。コーナーに合わせて舵を入れていけば自然にラインに乗っていく。御しやすく安心感が高い。

また、旋回力の急激な立ち上がり、つまり唐突な横Gの変化は山岳路においては同乗者にとって不快だが、Bクラスは“コーナリング時の車体挙動とハンドリングの面からの快適性”を高めたとも言える。

この辺りがうまくコントロールできていないと、補正運転で同乗者のストレスを減らさなければならず、クルマ側で上手にこなしてくれるのは大変有り難い。

Bクラスの美点とは

「プレミアムを求めて!」というとちょっと違っているような気もする。

インパネ周りのデザイン機能は他のメルセデス車との共通点が多く、シートや内装の設えもクラス最上の出来。

改良新型メルセデス・ベンツB 200 dの前席(内装色:クラシックレッド/ブラック本革)
改良新型メルセデス・ベンツB 200 dの前席(内装色:クラシックレッド/ブラック本革)    宮澤佳久

車載ITには最新MBUXを採用しているし、安全&運転支援機能もアップデートされている。走りの質感も一層高まっている。

コンパクトカーで、最もプレミアム性の高いモデルの一車なのは間違いない。

ただ、「B 200 d」の最大の美点は“同乗者と一緒に心地よいドライブ”を最終目的としていること。すべてのベクトルがそこに向いていると言っても過言ではない。

しかも外連味がない。逆に外に向かって発信するプレミアム性が稀釈されているくらいで、その潔さも好感が持てる。

「B 200 d」の価格は573万円から。売れセンのAMGラインパッケージを装着すれば600万円を簡単に超えてしまう。

ファミリー&レジャー用途の実用性にのみ注目すれば割高にも思えるが、実用性の中にメルセデス車らしい質感・信頼感を織り込んでいるのが巧み。メルセデス車では地味なタイプだが、使って操って納得の価格設定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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