ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 後編

公開 : 2023.05.20 07:06

1930年代後半に人気を博したウッディワゴン。流行を受け誕生した、ウッドボディのハードトップを英国編集部がご紹介します。

車重やコストが重視される前のアメリカ車

今回ご登場願ったクライスラー・タウン&カントリーは、1950年式。ロングホイールベース版は698台が生産されたが、残存する80台の貴重な1台で、走行距離は8万7000kmほど。ドイツの博物館が輸入し、現在は英国でナンバー登録されている。

2ドア・ハードトップのタウン&カントリーは鮮やかなボディカラーで注文されることが多かったが、この例ではブラック。ルーフもペールカラーではなく、ブラックに塗られている。

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)
クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)

ステータスを主張するように、クロームメッキの巨大なフロントグリルは存在感が強い。ルーフラインは滑らかに弧を描き、ピラーレスのサイドガラスと相まって、サイドビューはクリーンだ。

ワニの口のように巨大なボンネットを持ち上げると、深い位置に細長いエンジンが収まっている。鋳鉄製の排気マニフォールドが鈍く光り、その上にキャブレターが伸びている。

重たいトランクリッドを開くと、巨大な荷室が現れる。ちょっとした引っ越しなら、これ1台で済ませられるかもしれない。

テールライトが両サイドで申し訳程度に光る。リアバンパーのオーバーライドは巨大。渋滞時に追突されても、びくともしないだろう。観察し始めると、必要以上に頑丈なことがわかる。車重や製造コストへ、強く意識が払われる前のアメリカ車らしい。

そのかわり、ドアは重厚でドアハンドルは滑らかに動く。サイドウインドウの格納式ワインダーなど、ディティールも見事だ。

ミッドセンチュリー・デザインの栄光

ボディは73年前の塗装を保っている。トリム類もオリジナルだという。クッションの厚いシートは、中央がナイロン・クロスで、サイド部分はブラックのレザー。リアシートには、保護のビニールがかけられている。

ボディサイズから想像するほど、車内空間は広くない。それでも、相当ゆったり座れることは間違いない。

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)
クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)

ミッドセンチュリー・デザインの栄光を感じさせるのが、ソフトパッドの入ったダッシュボード。クロームメッキの帯が左右いっぱいに伸びてる。ラジオデッキや、ライトとワイパー用のスイッチ類など、すべてがスタイリッシュに仕上げてある。

巨大で堅牢そうなステアリングホイールの奥には、半円を形どったメーターパネル。時速110マイル(177km/h)まで刻まれたスピードメーターを囲むように、燃料計などの補助メーターが並ぶ。

アメリカのパトカーに装備されていそうなスポットライトは、タウン&カントリーに標準装備だったようだ。ダッシュボードの下から展開される、食事用のトレイも。衝突時の安全性は考えない方がいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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