ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 後編

公開 : 2023.05.20 07:06

じんわり溶け出すようにパワーが展開

タウン&カントリーの巨大さを目の当たりにすると、英国の一般道では慎重に運転せざるを得ない。走り出しても、ボディが小さく感じることはない。サスペンションは柔らかく、ボディは重く、不慣れな左ハンドルでもある。

5.3Lの直列8気筒エンジンは、ささやくようなノイズを放ち、じんわりと溶け出すようにパワーを展開する。最高出力は137psしかない。滑らかに、37.2kg-mの太いトルクが湧き出る。

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)
クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)

ブレーキは、前後ともにディスクが奢られているため、不満なく効く。ただし、フローティング・キャリバーではなく、回転するケーシングの内側へ押し付けるように、2枚に別れたディスクが動くタイプ。知らなければ、ドラムブレーキにも見える。

トランスミッションは、フルードドライブを採用した3速セミ・オートマティック。1950年式のタウン&カントリーでは、これが標準だった。加速中にアクセルペダルを緩めると、次のギアが選ばれる。

筆者は、1速と3速をコラム・マニュアルのように扱った。発進後は、ゆったり加速するシングルギアのオートマティックのように、3速のまま速度を問わず走れる。

ステアリングホイールにはパワーアシストが備わらないが、ロックトゥロックは5回転近くあるため軽い。反応は終始曖昧で、速度域の低いタイトコーナーでは、急いで腕を切り返す必要がある。

速くシンプルなモデルを時代は求めていた

戦前のウッディワゴンでもなく、テールフィンがそびえる1950年代のフルサイズでもなく、スポーティなマッスルカーでもない、タウン&カントリー。この時代のクライスラーならではの、非常に個性的な2ドア・ハードトップだ。

この容姿を眺めていると、ロックミュージックを生み出したチャック・ベリー氏やアイク・ターナー氏が求めたクライスラーではなかったように思う。より以前の、ビング・クロスビー氏のイメージへ近いだろう。

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)
クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)

その頃のアメリカは、既にジェットエイジへ向かっていた。より速くシンプルなタウン&カントリーを、時代は求めていたはずだ。

協力:ゲートウェイ・オークション

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949〜1950年/北米仕様)のスペック

北米価格:4000ドル(新車時)/4万ポンド(約644万円)以下(現在)
販売台数:698台(1949〜1950年のみ)
全長:5613mm
全幅:1905mm
全高:1626mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:23.0秒
燃費:4.2-5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1720kg
パワートレイン:直列8気筒5302cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:137ps/3400rpm
最大トルク:37.2kg-m/1600rpm
ギアボックス:3速セミ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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