ジウジアーロ、新作ハイパーEVを一挙5台公開 「らしさ」ちりばめ 新提案も

公開 : 2023.05.04 11:35  更新 : 2023.05.08 08:28

LM1

「LM1」は、耐久レース仕様を念頭に置きつつ、完全な公道走行を可能にしたモデルである。レースのレギュレーションに準拠して、コクピットの左右幅は90cmと敢えてタイトに作られている。

いっぽうで各車の後部は、ディフューザーやF1マシンの典型的なリアライトを組み込んだスポイラーなど、多くの機能的要素を共有しながら差別化が施されている。

LM1。どのモデルも発表段階では価格・発売時期等の正式リリースはおこなわれなかった。
LM1。どのモデルも発表段階では価格・発売時期等の正式リリースはおこなわれなかった。    GFG Style

室内は全車共通のデザインランゲージに基づくとともに、特別なデザインの空気吹き出し口やシーリング・ライトなどが試みられている。

「挑戦」と「ファミリー・フィーリング」

ファブリツィオは「ラフィット・アウトモービリという新ブランドを識別できるようにすべく、スタイル的特徴を定義し、全5モデルに展開することを編み出しました。すなわち、まったく異なるユニークな特徴を持つ、独特のクルマをデザインすることはチャレンジでした」と振り返る。

同時に彼は、これら5台を僅か6か月弱で開発したことを強調する。開発期間の短縮は、将来他のクライアントにプレゼンテーションする際に、大きなセリングポイントとなろう。

5台のうち、最もジウジアーロらしいデザインといえば、バルケッタといえよう。個別の2座と個々に与えられたウインドシールドは、遠く1959年にジョルジェット・ジウジアーロのスケッチにさかのぼる。さらに1988年「イタルデザイン・アズテック」でも試みられたものだ。

また、サイドを貫くAピラー状のビーム(梁)は、2020年にGFGスタイルが発表したオープンカー「ドーラ・コンセプト」で提案されたものに近い。

これによって「公道走行用のオープンモデルとしては、異例の高い安全性を実現できる」とGFGスタイルは説明する。

過去作品とのデザイン的共通性や手法は、ジョルジェットが筆者と面会するたび大切な要素として強調してきた「ファミリー・フィーリング」とも合致する。

同一のブランドは祖父、父親そして子のように、一貫したアイデンティティを与えるべき、という思想だ。

そうした意味で今回の5台は、豊富な経験をもつデザイン会社の新たな挑戦でありながら、実は筋の通った提案といえる。

記事に関わった人々

  • 大矢アキオ

    Akio Lorenzo OYA

    在イタリアジャーナリスト。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で比較芸術学を修める。イタリア中部シエナ在住。今思えば最初に覚えたイタリア語は「ルーチェ」「カリーナ」「クオーレ」、フランス語は「シャルマン」と絶版車名ばかり。NHK語学テキストに長年執筆。NHK「ラジオ深夜便」にも出演中。「シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザインの軌跡」(三樹書房)をはじめ著書訳書多数。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事