セダンっていいね メルセデス・ベンツAクラス/Bクラスより、「A 200 dセダン」が光る時

公開 : 2023.05.04 19:15

乗り心地について

FWD車としては後輪に荷重が掛かる感覚が強めで、それも「いい味」を出している。

4輪のグリップバランスが大きく乱れることもなく、乗せたいラインに舵角を入れればいい。

メルセデス・ベンツA 200 dセダン(デジタルホワイト)
メルセデス・ベンツA 200 dセダン(デジタルホワイト)    宮澤佳久

高速直進でもコーナリングでも据わりのいい操縦感覚であり、姿勢やグリップバランスを整えるための修正・補正は必要最小限で済む。

ドライバーには御しやすく、同乗者は“安心感を覚える”操縦特性といえる。

乗り心地は、硬すぎず柔らかすぎず。

路面うねりなどの上下荷重やロール量からすれば締まったアシなのだろうが、サスの動き出しが滑らかつ穏やかなので柔らかく感じられる。

“柔軟さを纏った強靭さ”と評してはちょっと大袈裟のような気もするが、肌触り良く雑味の少ない乗り心地である。

内装・後席をチェック

メーターにも多重表示可能な大型のディスプレイを用いてグラスコクピット感を高めたインパネ周りは、Aクラスに共通した設計。セダンらしさは後席周りが要点になる。

居住性に影響の大きいホイールベースは、メルセデス車のセダンではAクラスの上に位置するCクラス・セダンよりも135mm短い。だが、トウボードから後席ヒップポイントまでの有効室内長はほとんど変わらない。

メルセデス・ベンツA 200 dセダンのインテリア(内装色:ブラック/レザーARTICO/MICROCUT)
メルセデス・ベンツA 200 dセダンのインテリア(内装色:ブラック/レザーARTICO/MICROCUT)    宮澤佳久

一回りコンパクトでも居住性はCクラス・セダン相応である。

この辺りはフロントピラーと前車軸の位置関係で一目瞭然だが、横置レイアウトのFWD車のスペース効率のよさによる。

後席の頭上空間に配慮したルーフデザインもあってヘッドルームも問題ない。後席からの見晴らしや閉鎖感はハイトパッケージングのBクラスには及ばないまでも、標準体型の男性が4名乗車で長距離ドライブをするにも不足ないキャビンだ。

なお、後席にはトランクスルーが採用され、箱物積載ではHBに及ばないものの、荷室奥行き拡大で長尺物の積載にも対応できる。コンパクトなセダンだが、実用への気配りの利いた設計だ。

価格が近いA、B、C

「A 200 dセダン」は纏まりのいいモデルだ。纏まりが良すぎて印象が薄いほど。そこがいい。

あざとく何かを主張せずに基本を押さえたウェルバランスはメルセデス車に共通した魅力であり、“セダンの本質”とも合致している。

メルセデス・ベンツA 200 dセダン(デジタルホワイト)
メルセデス・ベンツA 200 dセダン(デジタルホワイト)    宮澤佳久

反面、網羅的に高水準で纏めれば相応に価格も高くなる。実用性基準の単純なコスパ評価や“一点集中型”の投資価値には非効率。メルセデス車に対する質・信頼に基づくウェルバランスだからこそ成り立つ価格であり、納得もできるわけだ。

同パワートレインのA/Bクラスではほぼ同額。選び分けの決め手は実用性と外観などの嗜好的要素。

セダンを選ぶ理由は冒頭で述べたとおりで、大差ないとはいえ「静粛性」や「走り」の質感ではセダンが優位。ある意味で、メルセデス車を選ぶ理由を1番感じられる選択である。

ちなみに、Cクラスベーシック設定となるC 180アバンギャルド(ガソリン車)との対比では、価格は26万円安。走りの質感ではCクラスに分があるが、長距離用途中心にするなら燃費と動力性能に優れた「A 200 dセダン」のほうがバランスの取れた選択といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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