園児送迎バスの「置き去り防止」最前線 義務化で動くメーカー 今までと「異なるプレッシャー」が開発陣を動かす
公開 : 2023.05.05 21:25 更新 : 2023.11.24 14:10
4月から義務化された幼稚園などの送迎バス用「置き去り防止」装置を取材。見落としをさせない二重・三重の工夫が施されていました。
対象のバス 全国に4万4000台
幼稚園などの送迎バスで“置き去り”による死亡事故の発生を受け、2023年4月より「園児送迎バスへの安全装置の設置」が義務化となった(一年間の猶予期間あり)。
現在、これに合わせて自動車パーツ関連各社から、国が定めたガイドラインに合わせて開発された製品が続々とリリースされている。
安全装置の設置対象となるのは全国の幼稚園、認定こども園、保育所、特別支援学校などの送迎バスで、合計約4万4000台となる。
国土交通省のガイドラインに適合する「後付けタイプ」の置き去り防止安全装置は現在40種類以上(2023年3月末時点)があり、トヨタ自動車でもコースター(幼児専用車)やハイエース(幼児バス)向けに純正品を用意している。
今回取材を行ったのは、パイオニアが開発した「NP1車内置き去り防止安全装置」。
ネーミングからもわかるように、昨年からリリースされている音声ナビ・ドライブレコーダー機能などを一体化したオールインワン車載器「NP1」の仕様を一部変更した特別仕様で、4月25日に出荷が開始された。
置き去り防止 2つの方式とは
置き去り防止安全装置には大きく分けて、“置き去りがないこと”の確認を促す「降車時確認式」と、“センサーで置き去りを検知”する「自動検知式」の2種類がある。
このNP1車内置き去り防止安全装置は、その両方の機能を持つ「併用式」となっている。
開発にあたりパイオニアでは、川越事業所近くの川越幼稚園の協力を得て実証実験を繰り返し行ってきたが、今回特別に同園のご厚意でバスに装着されたプロトタイプ(機能は製品版と同じ)を見せていただくことができた。
助手席の上方に付属ブラケットで取り付けられていたNP1車内置き去り防止安全装置の見た目は、従来からの市販モデルとほぼ変わらない(厳密にいえばケーブルが1本増えている)。
だがフロントバンパーの内部には車外警報用のホーン、車内後方には安全確認ボタン、ダッシュボード内にはバッテリーケーブルハブシステムなど別体ユニットが取り付けられている。
そして本体機能からはスマート音声ナビ、車載Wi-Fiルーターなど保育事業者に不必要な機能が削られており、代わりにクラウドドライブレコーダーの機能が強化されている。
実体験 停車後なにが起こる?
ドライバーがエンジンを切ると、NP1から「降車時確認機能が作動中。車内を見回り5分/10分以内に安全確認ボタンを押してください。ボタンが押されなかった場合、車外警報が鳴ります。ボタンを押した場合、エンジンを切ってから15分後に自動検知機能が作動します」という降車時確認アナウンスが自動的に流れる。
かなり丁寧な内容だが、これは“ふだんと違うドライバーでも認識ができるように”とのことだ。このアナウンスは、車内後方に設置しているボタンを押すまで止まらずに繰り返し流れる。
当然ドライバーは車両後方まで歩いて行かなくてはボタンを押せないため、その間に車内の見回りができるというわけ。
もし、ドライバーがボタンを押し忘れると車外向けに警報が発せられるとともに事前に登録したスマホ(最大5台)向けにSMS通知が自動送信されるのだ。
この警報を止めるには、車内後方のボタンを押さなくてはならない。つまり、見回り作業ができていない(=ボタンが押されない)場合にも必ずスタッフや周囲の人が気づくような仕組みになっている。