シトロエンe−C4X 詳細データテスト
公開 : 2023.05.13 20:25 更新 : 2023.06.09 15:57
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
シトロエンはe−C4Xを、ファミリーカー市場の手頃な価格帯に投入したいと考えた。それも、大型ハッチバックやコンパクトSUVよりエレガントで、空力性能で上回り、しかも実用性は損なわないものを。これはかなりタフな話だ。
いまやさほど大きいほうではない18インチホイールは幅も狭く、地上高は比較的高め。フロント横置きモーターとボディ後部の延長により、オーバーハングは前後とも長い。デザイン的な踏ん張り感はない。
バルキーで、場所によっては不恰好の一歩手前にある。しかし、ハッチバックのC4のように、独自性は強く、長くなったシルエットは全体のプロポーションにバランスと洗練された感じを与えている。
その下にあるメカニズムは見慣れたものだ。ベースとなるのは、ステランティスの電動車用プラットフォームであるe−CMPだ。今のところ、グループ内の電動車はほとんどがこのアーキテクチャーを使用しており、そのなかでC5Xは、欧州市場における最大のモデルだ。
ヴォグゾール・コルサ・エレクトリックやプジョーe−2008がそうであるように、136ps/26.5kg-mの同期モーターをフロントに、駆動用リチウムイオンバッテリーをキャビン床下に積む。バッテリーの実用容量は46kWhで、充電性能は最高で急速100kWだ。
このサイズのクルマとしてはかなり控えめなバッテリー容量だが、そのぶん車両重量は抑えられた。テスト車の実測1623kgというウェイトは、キア・ニロEV 65kWhの1739kgやMG 4ロングレンジの1692kgより軽い。
そのうえ、e−C4ハッチバックより空力に優れており、それらの恩恵はWLTP混合モードで356kmという航続距離に表れている。EVに対する心理的な障壁を取り去るほどではないが、長距離走行より優秀なエネルギー効率を重視するなら納得できる数字だ。
4.6mの全長はC4ハッチバックより240mm長いが、その延長しろはリアのオーバーハングに集中している。シトロエンによれば、リアシートのリクライニング角度が増したことで後席の居住スペースが広がったというが、拡大したスペースのほとんどは荷室に充てられている。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアはトーションビームで、前後ともコイルスプリング。シトロエンによれば、独自のバンプストッパーであるプログレッシブハイドロリッククッション(PHC)により、トラベルの限界でプログレッシブにダンピングを制御することで、スプリングレートをソフトにできるという。結果、乗り心地が全体的に改善されるとも。
なお、このクルマに採用されたPHCは、フロントが伸びと縮みの両方向、リアが縮み方向のみに作用する。