シトロエンe−C4X 詳細データテスト 

公開 : 2023.05.13 20:25  更新 : 2023.06.09 15:57

走り ★★★★★★★☆☆☆

馬力荷重比は84ps/tで、これは1991年に1.6Lエンジンを積むシトロエンZXの中級グレードと同程度だ。出力と重量の変化に鑑みれば妥当なところだが、電気モーターがもたらすはずのパフォーマンスやドライバビリティに対する期待には応えられていない。

パワートレインの動的要素においてキーとなる強みは、スムースさと洗練性、レスポンスやリニアさ、そして控えめながらも扱いやすい低速からのピックアップに効くトルクだ。エネルギー回生のドライバーによる操作面が改善され、もう少しだけ硬くてプログレッシブさを高めたブレーキペダルがあれば、状況はよりよくなるだろう。

動力性能はほどほどだが、快適志向のEVとしては納得いくもの。回生ブレーキの効き具合をスイッチやパドルで調整できれば、エネルギー効率の向上も図れそうなのだが。
動力性能はほどほどだが、快適志向のEVとしては納得いくもの。回生ブレーキの効き具合をスイッチやパドルで調整できれば、エネルギー効率の向上も図れそうなのだが。    LUC LACEY

パワーがもっとあれば、それに越したことはない。しかし、走りにクオリティに求めるものがスポーティな運動性以外にあるクルマである以上、絶対不可欠と感じることはまったくない。

電子制御トラクションコントロールは、50km/h程度で自動的に起動するものの、発進時にはオフにできる。それでも、ドライ路面では、ホイールスピンさせようとしても、しそうな気配すら見られなかった。0−97km/hは10秒近く、まだまだ伸びしろはありそうだ。

しかし、ステランティスは昨年、e−CMP電動駆動ユニットのファイナルレシオをロング化。コストパフォーマンス重視のEV購買層は、加速性能より航続距離でクルマ選びをする、という判断らしい。

これはなかなか賢明な判断だった。というのも、このクルマはエキサイティングではないが、ドライバビリティに優れ、そこそこ速い。そして、穏やかでリラックスしたクルマなので、2点間移動は爽快かつシンプル、また静かで、かなり効率的に行える。

とはいえ、シトロエンが回生ブレーキにドライバーが操作できる調整機構を加えていたら、効率はもっと高められたはずだ。ところが実際は、走行モードをエコからノーマル、そしてスポーツへ切り替えても、スロットルを抜いた際の回生エネルギーの発生量に明確な違いは見られない。

トランスミッションには、即座にエネルギー回生性能を最大限引き出すBモードが設定されているが、パドルやスイッチ、タッチ画面などでの切り替え操作はできない。繰り返すが、それさえあれば、開けた道でもっとも効率的な運動エネルギーの保全ができるのだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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