社員からのクリスマス・プレゼント ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペ 特別な手作り 後編
公開 : 2023.05.27 07:06
塗装や内装など殆どが86年前のまま
1947年に70歳を迎えた彼は、ステアリングホイールが重いこのクルマから、軽く回せるウーズレー・エイトに乗り換えている。手放された25 ドロップヘッド・クーペは、DON 642のナンバーのまま、ウーズレーの工場で保管されることになった。
1963年にナフィールドは逝去。グレートブリテン島の中部、ミーシャムに存在したミッドランド自動車博物館へ寄贈された後、1966年からは南部のモンタギュー自動車博物館、現在の国立自動車博物館の所蔵となった。
その後、約4万8000kmの距離を刻んだ状態で、2003年にボナムズ・オークションへ出品。カーコレクターでカーディーラーを営む、アイヴァン・ダットン氏が落札した。
アイヴァンはボンネットを交換し、トランスミッションをリビルド。ブレーキのオーバーホールを施し、2006年に再びオークションへ。複数のオーナーを介して、2018年からはジョン・ワース氏が面倒を見ている。
誕生から86年を経た25 ドロップヘッド・クーペは、驚くほどのオリジナル状態を保っている。漆黒の塗装は1937年に塗られたまま。熱の影響を受けやすいボンネットや消耗品を除いて、ボディトリムやカーペットなど、殆どの部品が当時のものだという。
リアヒンジのドアを開くと、クッションの分厚いシートが出迎えてくれる。ステアリングホイールは大径で、4本のスポークが支えている。ダッシュボードはマホガニー材で仕立てられ、6枚のメーターが美しくレイアウトされている。
流れが速い郊外の幹線道路でも問題ない
ドライビングポジションは高め。スカットルも高く、ボンネットの先端で陽光を反射する、W型のマスコットが車線内を維持する目印になる。ステアリングホイールは低速域で特に重く、反応はスローだ。高齢のナフィールドには、力仕事だったはず。
スピードが乗ってくると、ステアリングも軽くなる。しかし、交差点では忙しく腕を動かす必要がある。
ウーズレーの直列6気筒は洗練されていて、静かに充分なパワーを生み出す。エンジンルームとキャビンの間には、バルクヘッドが2重にある。トルクは太く、シフトチェンジは最小限で済む。
トランスミッションは4速。正確な感触を伴ってゲートへ滑り、高めのギア比でリラックスした運転に浸れる。現代の交通に紛れても25 ドロップヘッド・クーペは堂々と進み、舗装の剥がれた穴はリーフスプリングが余裕でいなす。
流れが速い郊外の幹線道路でも、問題ないことに驚く。オーナーのジョンは、ロンドンの北から西部のウェールズ地方まで、約400kmの道のりを110km/h前後の巡航で最近走ったという。
この黒く輝く2ドア・コンバーチブルを運転していると、自分が無敵になったような感覚に陥る。普通の25 ドロップヘッド・クーペとは、少し違う体験ではないかと思う。約4000名の社員に支えられているという、バックボーンがあるからに違いない。
協力:ジョン・ワース氏、クライブ・ボタン氏、ウーズレー・レジスター
ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1938〜1939年/英国仕様)のスペック
英国価格:498ポンド(新車時)/8万ポンド(約1288万円)以下(現在)
販売台数:153台
全長:4369mm
全幅:1702mm
全高:1676mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:19.1秒
燃費:5.7-6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1720kg
パワートレイン:直列6気筒3485cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:109ps/3600rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル