期待大の電動ホットハッチ 新型ミニ・クーパー E 試作車へ試乗 182psで297km 後編

公開 : 2023.05.18 08:26

現行のミニが登場してから10年。新しいボディとプラットフォームを得た次期型の試作車へ、英国編集部がひと足先に試乗しました。

自然でクイックなフロントノーズの反応

次期型ミニ・クーパー Eの試乗が許されたのは、オーストリアの一般道コースと、小さめのサーキット。最終的な評価は、量産仕様を自由に運転してからになるが、第一印象は間違いなくポジティブなものだった。ちゃんとミニしている。

駆動用バッテリーがフロア下に敷き詰められているにも関わらず、着座位置は低いまま。フロントシートからは、座面部分の調整式サイドボルスターが消えてしまったが、座り心地や身体のサポート性は良好。大人には厳しいが、リアシートもある。

ミニ・クーパー S プロトタイプ
ミニ・クーパー S プロトタイプ

モダンさをぐっと強めたインテリアではあるが、クーパー Eのシステムスタートはイグニッションキーを回すようなスタイルで。心をくすぐる演出の1つといえるだろう。

まず気付いた点は、ステアリングが変化したこと。技術者は、中心付近の感触をもう少し詰めたいと話していたが、既に筆者にはかなり好印象なものだった。現行ミニの重すぎるフィーリングと、少しダルな旋回初期の反応が大幅に改善している。

ドライブモードをスポーツにしても、ステアリングホイールの操舵感は軽いまま。反応は自然で、タイヤや路面の状態が手のひらを通じて伝わってくる。

コーナーの出口でアクセルペダルを蹴飛ばすと、鋭い加速とともにトルクステアをじんわり感じる。ホットハッチらしい手応えがうれしい。

ロックトゥロックは2.2回転とかなりクイック。レシオは固定で、レスポンスはダイレクトだ。慣れるまでに時間が掛かるかもしれないが、手の動きに対するフロントノーズの反応は掴みやすい。

安定したコンパクトカーとしての走りも得意

試乗車にはスタッドレスタイヤが履かされており、試乗ルートは溶けた雪で濡れていた。それでもグリップ力は高く、小気味いいステアリングの動きを支持。従来のミニでは体験できない勢いで、コーナーへ食らいついてみせた。

フロントタイヤ側へ荷重をかけ、リアタイヤを左右にスライドさせることも容易なようだ。楽しく遊べる。

ミニ・クーパー S プロトタイプ
ミニ・クーパー S プロトタイプ

もちろん、活発なホットハッチではなく、安定したコンパクトカーとして走ることも得意といえる。ミニの技術者はトラクションとスタビリティ・コントロールの制御設定へ、かなりの時間を注いでいるという。

普段どおり、すべてがオンの状態にしておけば、トラクションが維持される範囲で駆動用モーターのパワーを巧みに調整。リアアクスルの安定性を保ったまま、俊敏な操縦性を味わえる。介入も滑らかで、バランスがいい。

DSCスポーツ・モードを選ぶと、トラクション・コントロールは効いたまま、タイヤ個別にブレーキを制御。コーナーでの身のこなしが、一層引き締められる。

手に負えなくなる範囲を越えないよう、システムが監視してくれる。荷重移動での変化を体感したり、優れたシャシーバランスを存分に味わえるだろう。

DSCオフは、よほど酷いホイールスピンへ陥らない限り放任される。広いサーキットで思い切り飛ばすなら、このモードがいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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