異次元にスリリング スパルタンモーター・スパルタン ホンダ K24型から466ps 前編

公開 : 2023.05.24 08:25

自らスパルタンを名乗る、情熱的なドライバーズカーへ英国編集部が試乗。異次元のドライビング体験に圧倒されたようです。

オーストラリアの兄弟が作った究極のマシン

サーキットを6周した辺りで、セミスリックタイヤの表面が軽く溶け出した。グリップが増し、自信が高まる。スーパーチャージャーで過給される2.4L 4気筒エンジンが、8500rpmめがけて鋭く回る。

仮にアリエル・アトムとケータハム・セブン 620Rが結ばれて、最愛の息子が誕生したら、こんなクルマに仕上がるだろう。秀でたDNAが合成され、素晴らしい結果が導かれることは想像に難くない。

スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ
スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ

この小さなスーパーマシンを生み出したのは、オーストラリア・シドニーに拠点を置くスパルタンモーター社。双子の兄弟が営んでおり、グレートブリテン島のアングルシー・サーキットへ向かう途中、11時間の時差を考慮しつつリモートでお話を伺った。

ニックとピーターというパップ兄弟が、究極のドライバーズカーを作るために投じてきた努力を、情熱的に口にする。恐らく、クルマ好きなら1度は想像したことのあるテーマだと思う。

理想的なスタイリングでボディを仕上げ、最高のエンジンを有能なシャシーへ積む。見た目は清潔感がある方がいい。技術的には純粋な方がいい。そうして誕生したのが、スパルタンだ。

スパルタンの雰囲気は往年のレーシングカー、ローラT70に似ている。車重は700kgで、ロータス・エリーゼ S1より軽い。瞬発力ではフェラーリ296 GTBにも引けを取らない。

読者がご想像する、理想のマシンとはどんなものだろう。彼らと年代が同じなら、そう遠くはないのではないだろうか。

高校卒業後にデューンバギーを自作

カーボンファイバー製なことを隠さない、曲面が美しいボディで包まれたスパルタンは、タダモノではない。大きなリアウイングも、お飾りではない。

パップ兄弟は高校を卒業して間もなく、大破したバイクのコンポーネントを利用し、オフロード用のデューンバギーを自作した経験を持つ。父親がエンジニアだったこともあり、若くして旋盤や溶接には慣れていたという。

スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ
スパルタンモーター・スパルタン・プロトタイプ

オーストラリア限定モデルのクライスラー・ヴァリアント・チャージャーや、フィアットX1/9、ランボルギーニ・ウラッコまで、様々なクルマへ乗り修理もしてきた。しかし、結婚して子供が生まれたことで、大人しくしている期間が続いた。

それでも、デューンバギーで味わった輝かしい記憶が消えることはなかった。子育てが落ち着き始めた2007年、兄弟の心は再燃。ドゥカティ1198Sというスポーツバイクの2気筒エンジンを利用した、シングルシーター・マシンへ着手したという。

オーストラリア人らしいユーモアに溢れるピーターが、スタイリングを担当。少しドライなニックが、シャシーを設計した。エンジンのパワーはチェーンで駆動され、ドレクセラ社製のリミテッドスリップ・デフを搭載。車重は300kgに仕上がった。

その後、ホンダシビック・タイプRから拝借したKシリーズ・ユニットを載せた、279psの2シーターマシンへ展開。最終的に、筆者が試乗させていただいた、量産版へ導かれたという。かなり端折っているけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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