「GT」の名にふさわしいグランドツアラー 10選 長距離ドライブを楽しむ大人なクルマ

公開 : 2023.05.20 18:05

2. アルピナB3

アルピナB3を見ると、単なるBMW 3シリーズと見間違えるかもしれない。オーナーによっては、それこそがアルピナのポイントになるのだろう。B3は、ドライバーがパーソナルに楽しむ移動空間であり、BMW M3よりも派手さを抑えたパフォーマンスカーなのだ。

アルピナは、四輪駆動システムを搭載したBMW M340i(セダンまたはツーリング)をベースに、M3のS58型3.0L直6ターボエンジンと独自のサスペンションを搭載する、アルピナ専用仕様を開発した。ワイドトレッド、多数の専用コンポーネント、独自のジオメトリー設定、特注のアイバッハ製スプリングが与えられる。ダンパーとステアリングはM340iと同じものだが、アルピナ独自のセッティングが施されている。

2. アルピナB3
2. アルピナB3

その結果、M3よりもわずかにソフトで即応性に欠けるものの、GTとしてはM3を凌駕するものとなった。明けても暮れても、どんな天候でも、このクルマは熱狂的で納得のいく答えを返してくれる。期待を外れることはほとんどない。

英国編集部は2020年のロードテストで現行型B3に最高評価をつけたが、これは快適性、パフォーマンス、実用性、エンゲージメント、そして競合車と比較した場合のバリュー・フォー・マネー(金額に見合った価値)といった点で、これほどまでにうまくまとめ上げたクルマは、間違いなく他にないからだ。アルピナは、非常に完成度の高いモデルだ。アルピナは、顧客がクルマに何を求めているかをはっきり認識しているようだ。

標準のBMW 3シリーズと同様に、アルピナB3も2023年にフェイスリフトを行ったが、ありがたいことに、走りの本質は変わらなかった。変更点は、ルックスの刷新と、BMWのインフォテインメント・システム「iDrive 8」の大きな曲面ディスプレイが追加された程度だ。

3. メルセデスAMG SL

メルセデスのGTカーを名前だけで選ぶとしたら、AMG GTをチョイスするのが自然だろう。でも、それは間違い。なぜなら、AMG GTは長距離の快適性よりもドライビングの楽しさを優先するスポーツカーという位置づけが強いからだ。

1960年代半ば以降、メルセデスのGTカーはSクラス・クーペと並んでSLが担ってきた。SLは最近、7代目としてリニューアルされた。AMGが全面的に開発し、ファブリックルーフを復活させ、よりスポーツカー的な要素を強めている。

3. メルセデスAMG SL
3. メルセデスAMG SL

それでも、GTとして最高峰の存在であることに変わりはない。SLの性格の多くを物語るのが4.0L V8で、おおらかでスレッジハンマーのようなパワーがあり、決して飽きることはない。ラグもほとんどなく、その味付けはSLのシャシーに見事にマッチしている。SLは全般的に優れているが、路面が悪いと乗り心地にわずかな脆さを感じることがあるのだ。

快適で、ゴージャスで、心地よいキャビンと、自由自在な縦方向のボディコントロールがあれば、ほとんどの場合、何も考えずに長大な距離を走りきることができる。

AMGが開発した新型SLは、当然ながらすべてがAMGだ。ラインナップは4気筒のSL 43から始まる。本稿執筆時点ではまだこのモデルに試乗できていないので、SLのキャラクターがどの程度残っているかは未知数である。SL 55は最高出力475psのV8、SL 63は585psのV8を積み、油圧式アンチロールバーが追加されているが、乗り心地を変えるには程遠いようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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