マツダCX-60の気になるパワートレイン 直6ディーゼル車、直4 PHEV 推すならどっち?

公開 : 2023.05.16 08:45

たんに出力を抑えたディーゼル?

「標準仕様のディーゼル」は、エンジン本体のパワースペックもマイルドハイブリッド仕様と異なり、最高出力が23ps、最大トルクが5.1kg-m低下している。

実際に試乗した印象もデチューン版の印象は否めない。

3.3Lの直6ディーゼル・ターボ(231ps/51.0kg-m)を縦置きで積むディーゼル仕様。こちらも8速トルコンレスATとの組み合わせだ。
3.3Lの直6ディーゼル・ターボ(231ps/51.0kg-m)を縦置きで積むディーゼル仕様。こちらも8速トルコンレスATとの組み合わせだ。    前田惠介

踏み込み直後の加速の立ち上がりだけでなく、緩やかなアクセルコントロールに対する追従性、深く踏み込んだ時の加速の伸びやかさ等で及ばない。

ただ、悪い印象はない。

スポーティとか昂揚感を尺度にしてデチューン版としたのだが、大排気量とターボがもたらしたクラス最大級の太いトルクと低速域での穏やかな扱いやすさで、市街地も山岳路も高速も悠々としている。直6らしい滑らかさはディーゼルを意識させず、高回転域までストレスなく回る。

付け加えれば、トルコンレス8速ATとの相性もいい。駐車等の極低速域での扱いはトルコンATと遜色ない。

対策は万全にしても、多板クラッチ型でこれほど半クラッチ領域を広くして大丈夫なのか心配してしまうほど。ハイブリッド系2モデルに比べても、クラッチ制御や変速がスムーズだ。

頼もしくも親しみやすい高性能なのだ。

重量差 250kgもあるけれど

駆動方式はPHEVとマイルドハイブリッド車が4WDに限定されるが、標準ガソリン車と標準ディーゼル車は4WDと2WD(FR)が設定され、試乗した標準ディーゼル車は「2WD仕様」。

フットワークはサス設計だけでなくホイールベースや重量、駆動方式等々の物理的条件の影響が大きい。

CX-60 PHEVエクスクルーシブ・モダン(内装色:ナッパレザーピュアホワイト)
CX-60 PHEVエクスクルーシブ・モダン(内装色:ナッパレザーピュアホワイト)    前田惠介

車体サイズは同じでも、PHEVと2WDの標準ディーゼル車では車重に250kgくらいの差がある。駆動方式も車重も異なる2車だが、乗り味の差は少ない。ほぼ同じといってもいいくらいだ。

加減速や旋回でのノーズダイブやスクォートが少なく、ピッチ方向の車体軸線変化を抑えた挙動。緩みや遅れなく、しかも過剰反応や揺れ返しの少ない操舵応答性とライントレース性。

操舵初期応答など2WD車のほうが多少切れ味が強めの印象もあったが、マツダの目指したハンドリングがどういうものか伝わってくる挙動と操縦特性だ。

さらに言うならマツダ車味が濃いせいで、FF系プラットフォームモデルとの差異があまり感じられない。また、段差乗り越え時の突き上げが目立つなど乗り心地のしなやかさが薄いのが残念だ。

見極めは「走りの質」「扱いやすさ」

パワートレインのグレードアップで動力性能は向上するのが一般的である。

「PHEV」は、実用動力性能やエコ性能だけでなく、昂揚感等のファントゥドライブの要素でもCX-60の最上位パワートレインらしい味付け。刺激よりもドライバビリティの質を求めた特性も好感が持てる。

CX-60 XD Lパッケージ(ディーゼル/2WD/ソウルレッドクリスタルメタリック)
CX-60 XD Lパッケージ(ディーゼル/2WD/ソウルレッドクリスタルメタリック)    前田惠介

「標準ディーゼル車」は、マイルドハイブリッド仕様に比べると切れ味・昂揚感は今ひとつ及ばないが、得手不得手のない扱いやすさや馴染みやすさが見所。

同グレードの4WD車同士の価格差は、約160万円である。

WLTCモード燃費はPHEVが14.6km/L、標準ディーゼル車(4WD)が18.5km/L。ちなみにマイルドハイブリッド車は21.0km/Lであり、燃料コストの点ではディーゼルが有利である。

……スポーティなプレミアムSUVとして選ぶのがCX-60の本筋だろう。

ならばPHEVは魅力的だが、標準ガソリン車以外の3パワートレインを試乗して最も印象に残ったのは「標準ディーゼル車」だった。

コスパの面ではマイルドハイブリッド車と悩ましい部分もあるが、シリーズでは手頃感のある価格設定と直6ディーゼルの“エンジンフィールと余力”が好印象だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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