還暦のパゴダルーフ メルセデス・ベンツSL(W113型) 時代を超越する優雅 中編
公開 : 2023.06.03 07:06
最高出力を182psへ高めた2.8L直列6気筒
ところが、250 SLの販売期間は約10か月と短かい。生産数は5186台で、1968年1月に後期型の280 SLへバトンタッチしている。
ベルギー・ブリュッセルで発表された280 SLは、1963年の230 SLから大幅に車重が増えていた。それでもシリンダーがボアアップされ、直列6気筒エンジンは2778ccを得たことで、動力性能は向上している。
最高出力は182psに届き、最大トルクは26.6kg-mへ増やされていた。静止状態から160km/hまでの加速時間は5秒短縮。0-97km/h加速を9.3秒でこなし、最高速度は199km/hに届いた。
実際のところ、同時期の高価な2シーターモデルとしては驚くほどの数字ではなかったが、市場の反応は好意的なままだった。英国価格は5000ポンド以上もしたが、生産が終了される1971年2月までに、さらに約2万4000台が売れている。
特別な思い入れを持つ人に選ばれる230 SL
1963年の230 SLの発表から60年が過ぎようという現在だが、近年はW113型がクラシックカーとして注目度を高めてきている。新車だった頃以上に。特に後期の280 SLは、かなり強気な価格で取り引きされているようだ。
今回ご登場願った3台のうち、ホライゾン・ブルーのクルマが250 SLで、サンドベージュ・メタリックが280 SLとなる。ともにメルセデス・ベンツSLを中心に扱うクラシックカー・ガレージ、SLショップ社のショールームに並ぶパゴダルーフだ。
「230 SLは、特別な思い入れを持つ人に選ばれますね。280 SLには、より大きな費用的な決断が必要になります」。と同社の代表、ブルース・グリーサム氏が説明する。
「レストアに必要なコストは、どちらもさほど変わりません。購入後にレストアするのではなく、既に仕上がった状態の230 SLや250 SLを選ばれる傾向が高いです。特に初期のW113型の場合、入手が難しい部品も出てきているためです」
SLショップ社の現在の在庫は、3代目となるR107型より、パゴダルーフのW113型の方が多いという。「課題といえるのが、メカニズムへ余り感心を示さないオーナーの方へ、弱点を理解してもらうこと。運転への気遣いも」
「1960年代の殆どのクラシックカーより、SLは遥かに運転しやすことも事実ですが」。とグリーサムが付け加える。
この続きは後編にて。
画像 パゴダルーフのメルセデス・ベンツSL(W113型) 初代300 SLにR107型、SLS 最新AMGも 全122枚