還暦のパゴダルーフ メルセデス・ベンツSL(W113型) 時代を超越する優雅 後編

公開 : 2023.06.03 07:07

メルセデスのスポーツカーを理想的に表現

W113型のSLは、馴染みやすくまとまりがいい。技術者のルドルフ・ウーレンハウト氏のように果敢な気持ちがあれば、サーキットでは鋭い走を披露するはず。ただし、リア・サスはスイングアクスルで、アクセルペダルでの姿勢制御は容易ではないだろう。

ステアリングホイールは、230 SLの方がわずかに重い。250と280はパワーステアリングを備えるが、アシスト加減が優秀で、感触に大きな違いはないようだ。

サンドベージュ・メタリックのメルセデス・ベンツ280 SLと、ホライゾン・ブルーの250 SL、アンスラサイト・グレーの230 SL
サンドベージュ・メタリックのメルセデス・ベンツ280 SLと、ホライゾン・ブルーの250 SL、アンスラサイト・グレーの230 SL

ステアリングレシオは高めで若干の曖昧さがあるものの、すぐに慣れる範囲。むしろ、パゴダルーフの開放的で心地良い個性へ合致している。

3台とも乗り心地はしなやか。英国の傷んだ路面でも、ボディがガタつくことはない。運転席からの優れた視界で、穏やかな気持ちを保っていられる。

最近はW113型へ関心を示す人が多いという理由が、やんわり染みるように伝わってくる。誕生から60年が経過するが、やはり、時代を超越した上品さや優雅さに溢れている。

カーデザイナーのポール・ブラック氏が描き出したボディラインは、現代の交通に紛れても際立つ存在感を放つ。現代のモデルで、同様な心象を残す例は存在するだろうか。

初代300 SLはスーパーカーであり、3代目のR107型はパーソナル・ラグジュアリーというコンセプトで、SLの商業的な成功を確実なものにした。その間にあるW113型は、メルセデス・ベンツのスポーツカーを、最も理想的に表現したモデルに思える。

それでいて、その個性や魅力は複層的。多くの傑作と同様に、その深遠さへも惹かれるのだろう。

協力:SLショップ社、ビルズリー・マナー・ホテル&スパ

メルセデス・ベンツSL(W113型/1963〜1971年)のスペック

英国価格:3868ポンド(新車時)/30万ポンド(約4830万円)以下(現在)
販売台数:4万8902台
全長:4285mm
全幅:1760mm
全高:1305mm
最高速度:189-199km/h
0-97km/h加速:9.3-10.7秒
燃費:6.4-8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1211-1420kg
パワートレイン:直列6気筒2306・2496・2778cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/5500rpm-182ps/5900rpm
最大トルク:21.9kg-m/4500rpm-26.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル/4速オートマティック

サンドベージュ・メタリックのメルセデス・ベンツ280 SLと、ホライゾン・ブルーの250 SL、アンスラサイト・グレーの230 SL
サンドベージュ・メタリックのメルセデス・ベンツ280 SLと、ホライゾン・ブルーの250 SL、アンスラサイト・グレーの230 SL

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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