フォード・フィエスタ vs ミニ・クーパー vs セアト・イビーサFR
公開 : 2014.10.02 23:40 更新 : 2017.05.29 19:33
ただしフィエスタのエンジンのように遊び心があるかと問われればそうではない。
セアトの低速域の振る舞いは正にフォルクスワーゲン製エンジンそのもの。ステアリングやペダル、ギアボックスは注意深くチューニングされ、ドライバーに苦労を強いず、機能的ないつものそれだ。従順であり、決して悪いものではない。
しかし、味わいが希薄なのだ。特に運転を楽しむことのできるクーパーと較べた時にそう感じることが多かった。ミニらしい乗り味はこの世代でも健在なのである。
エグゾースト・ノートはいささか誇張しすぎとも言えるかもしれないが、その分、常にこのクルマがどんな走りを望んでいるかがわかる。それに角の立ったシャシーにも不思議といらいらさせられることがない。バンプステアが最小限に抑えられている点、ハイ・プロファイル・タイヤのマナーも実に素晴らしい。ゴーカート・ライクと表現すると疲れるイメージがあるかもしれないが、ミニには疲れ知らずの楽しさがあるのだ。
オプションのダンパーとマルチリンク式のリア・サスペンションのお陰で足元は軽く感じ、さらに楽しさにも磨きをかけている。粘り強さもかなりのものだ。
横幅が先代よりも大きくなったおかげで、コーナーのマナーも安定感あるものになり、フォードとの差を大きく広げる結果となった。フォードの場合はやや慌てやすい傾向があり、粘り強さもミニにはやや劣るのだ。
ただしミニがサーボトロニック・ステアリング(BMWから多くに学んだ)を採用しなければ適度な重みと正確性を手にすることができなかったのに対して、フォードは外部の力を借りずにミニの目指すものを実現したことに対しては褒めるべきだし、ステアリングの直感性もお見事。油圧式あるいはセルフ・センタリング・スプリングと聞けば、古めかしいものと見なす向きも少なくはないはずだけれど、フォードの場合はそういった先入観を通り越した完成度だ。
ミニは人工的な味付けをもって楽しさを実現したのに対して、フォードはナチュラルな方向から楽しさへとアプローチした。フィエスタに乗って、 永続的な楽しみとは正にこういうことなのかと思った次第。
紛れも無く過去最高のウォームハッチと言って良いだろう。しかしながらセアトの快進撃を見る限り、明白な勝利とは言いがたい。
それでは結論といこう。
フィエスタは装備面でスイフトよりも優れている、と思えばいつだって、ミニのエキストラ・ギア・レシオや、洗練性、より良いインテリアのクオリティやエンジン・パワー、オールラウンダーの要素などを思い浮かぶことになるだろう。そこで考えるべくは車両価格。クーパーは£15,300(272万円)、フィエスタは£15,995(285万円)から。この差額は現実的にはかなり大きい。