世界最大の自動車メーカーを背負う仕事 トヨタ新社長「チャレンジは楽しい」 会長との関係は

公開 : 2023.05.18 06:05

トヨタの新社長、佐藤恒治氏に独占インタビュー。世界最大の自動車メーカーを率いる彼は、自身の役割や会社の将来をどのように考えているのか。会長の豊田章男氏との関係性についても聞きました。

トヨタ社長」のプレッシャー

佐藤恒治氏は、トヨタ自動車株式会社の役員であり、会社員であり、エンジニアであり、モータースポーツ部門のガズーレーシングや高級車部門レクサスの責任者であり、鼻血が出そうになるほど多くの肩書きを持っている。

そんな彼が、タイのサーキットで車両テストを行いながら豊田章男前社長と談笑しているときに、世界最大の自動車メーカーであるトヨタを、歴史的に重要なこの時期に経営しないかと聞かれた。それまで順調にキャリアを積んできたとはいえ、まったくもって衝撃的な話だったという。

エンジニア出身の佐藤社長は、自他ともに認める「クルマ好き」である。
エンジニア出身の佐藤社長は、自他ともに認める「クルマ好き」である。

トヨタの従業員数は37万2817人、年間販売台数は1050万台(3年連続で世界最大の自動車・商用車メーカー)、年間営業利益は100億ポンドを優に超える。

しかし、前社長の言葉を借りれば、自分で解決するには年齢的に無理がある課題も山積していた。ゼロ・エミッションへの挑戦、ソフトウェアや技術の進化、自動運転など激動の時代において、トヨタは自動車メーカーからモビリティ企業へと変貌する必要性に迫られているのだ。

66歳の豊田氏に対し、53歳で就任した佐藤氏は、大きなプレッシャーを感じていたことを認めてはばからない。

「大きな責任を感じていました」と彼は言う。

「わたし一人で成功を繰り返せるかどうか心配でした。ところが、章男さんが『そういう気持ちより、チームのキャプテンとしての自覚を持ちなさい』と言ってくれた。その瞬間から、『できる』と思えるようになったのです。わたしはリーダーですが、互いにサポートし合って目標を達成することができる。わたしは一人ではなく、周りにはチームがいて、彼らが成功できるようにしなければなりません」

豊田氏が始めたシフトを、佐藤氏が加速させていく。トップダウンで命令を下していく時代は、トヨタでは終わった。解決すべき課題も、その解決策も多すぎるため、1つの見解で済ますことはできない。

インタビューを始めてから数分も経たないうちに、佐藤氏が自動車会社の社長として好感を持たれやすい人物であることが明らかになった。大きな笑顔、温かい握手、何でも喜んで答えてくれるし、質問の事前審査もない。ある時、記者は彼に「あなたはクルマ好きですか」と尋ねた。通訳が話す間、彼は目を輝かせながら記者を見つめ、両手の親指を立てて微笑む。言葉はいらない。あの野獣のように美しく輝かしい、V8スポーツカーのレクサスLCの生みの親である彼は、まさに「カーガイ」なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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