トゥーバー取付けは想像より大変 ホンダ・シビック 長期テスト(5) 楽しい三輪バギー

公開 : 2023.05.27 09:45  更新 : 2023.06.29 08:47

積算1万2478km 最高に楽しい37年前の三輪バギー

ひと昔前、ホンダの広告戦略は好調だった。最も筆者の記憶に残っているのは、英国で展開された「インポッシブル・ドリーム」。ある男性がバイクで発進し、クルマ、ボートへ乗り換え、ホンダジェットで飛び立ち、最後にロボットのアシモが出迎える内容だ。

筆者は物心がついた頃から日本の自動車メーカーが好きだった。そんな気持ちを、後押ししてくれる内容だった。

ホンダ・シビックと筆者所有の三輪バギー
ホンダ・シビックと筆者所有の三輪バギー

日本車は能力の幅が広い。欧州車とは異なる、特徴的なモデルを提供し続けている。ホンダに限らず、トヨタスズキも、日産スバルマツダ、すべてが独自らしさを持っていると思う。

ホンダは、運転の楽しいハイブリッドだけでなく、マックス・フェルスタッペン氏が駆るF1マシンのエンジン、バイク、モーターボートの船外機、プライベートジェットまで、幅広く手掛けている。そして筆者は、37年前のホンダを今も大切にしている。

1970年代、同社はオールテレイン・サイクル(ATC)と呼ばれる三輪バギーを提供するようになった。1984年には、市場シェアの69%を握るまでに成長している。

父が営む農場には、ホンダの芝刈り機と発電機に加えて、三輪バギーもあった。若かった筆者が父から特別なプレゼントを受け取るのは、必然といえた。

写真の赤い三輪バギーには、72ccの4ストローク空冷単気筒エンジンが載っている。最高出力は3.5ps。遠心クラッチ付きの4速トランスミッションを介し、チェーンで後輪を駆動する。今でも最高に楽しい。

気使いなしに運転できるハイブリッド

ところが、三輪バギーは多くの事故を引き起こした。1980年代に入り、ホンダは英国での販売を中止した。自分は事故とは無縁だったが、父が注意するように頻繁に声をかけてくれたおかげだろう。

悪ふざけすれば転倒するが、スロットルを慎重に回し体重を移動させれば、コーナーを高速で駆け抜けられる。農場の砂利道ではテールスライドさせ、ナイジェル・マンセル氏になった気分になれる。

ホンダ・シビックと筆者所有の三輪バギー
ホンダ・シビックと筆者所有の三輪バギー

トランスミッションは単純。左足のペダルで変速でき、3速以上ではまあまあスピードが出る。全開で身をかがめれば、40km/hくらいには届くだろう。

倉庫にしまって以来、乗るのは6か月ぶり。手入れはこまめにしているし、2年に1度、地元のバイク店へメンテナンスにも出してきた。

コールドスタート時は、チョークを調整しないとうまく点火されない。新しいガソリンを注いで、何度かのトライで問題なく始動した。ホンダの技術力は、小さな三輪バギーにも落とし込まれている。

シビックの長期テストはもうじき終了予定だが、今から寂しい気分でいる。ハイブリッドへ改良を重ね、気使いなしに運転できる完成度へ高められている。バッテリーEVのように、充電計画や航続距離の心配はいらない。

確かに、以前のホンダと比べれば退屈かもしれない。しかし、仕上がりの良さが強く記憶へ刻まれた。ベーシックなハッチバックでありながら。よりエキサイティングな乗り物も、ホンダなら可能だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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