実用的なのに見た目も良い欧州ミニバン 10選 奥が深すぎる合理的なMPVの世界

公開 : 2023.05.28 18:05  更新 : 2024.08.16 16:11

4. フォード・トルネオ・コネクト

最近、フォルクスワーゲンと共同開発したピックアップトラックの新型レンジャーの登場が話題をさらっているが、実はフォードとフォルクスワーゲンによるコラボレーションの結果としては、トルネオ・コネクトが先である(もっと遡れば、90年代半ばのシャランとギャラクシーもある)。

先代のフォード・コネクトの才能を引き継ぎ、ベルランゴ並みのスペースとユーティリティ、そして磨きのかかったダイナミクスを実現した。フォルクスワーゲンのMQBプラットフォームを、フォードの技術者が丁寧にチューニングし、驚くほど安定感のある豊かなフィールを作り上げた。エンジンは1.5Lガソリンと2.0Lディーゼルに限られるが、どちらも十分な立ち上がりと加速を実現している。

4. フォード・トルネオ・コネクト
4. フォード・トルネオ・コネクト

ボディスタイルは従来通り、標準的な5人乗りと、ロング版の7人乗りの2種類から選ぶことができる。どちらも広い室内空間と便利な収納を備え、スライド式のリアサイドドアが汎用性を高めている。7人乗り仕様では、2列目・3列目のリアシートを取り外すと、3100Lの大空間が生まれる。クライメートコントロールやアップル・カープレイをはじめ、上級モデルにはシートヒーターやキーレスゴー機能が追加されるなど、充実した装備も魅力だ。

全体的なインテリアデザインは、フォルクスワーゲンの風味が強すぎるのが気になるところ。確かに、スマートなスタイルと製造品質は悪くないが、タッチセンサー式のヒーターコントロールに照明がついていないのは、実に惜しい。夜は使いづらく、暗闇の中を手探りで温度調整するしかない。標準装備のレーンキープアシストに感謝することになるだろう。

とはいえ、実用的なフォード車の魅力を鈍らせるほどではない。また、やっぱり「VW」のエンブレムがいいという方には、兄弟車のキャディもある。

5. フォルクスワーゲン・マルチバン

商用車ベースのミニバンだが、フルサイズのマルチバンは大家族にぴったりのクルマだ。フォルクスワーゲンの新型T7をベースにしており、80年近いTシリーズの歴史の中で、最もスタイリッシュで乗用車らしいモデルであることは間違いないだろう。

プラットフォームは商用車専用ではなく、MQBを採用しており、ゴルフをそのまま大きくしたかのような安心感と快適性、洗練された走りを実現している。ステアリングは正確で、ボディコントロールは良好、乗り心地はしなやか。もし、助手席に座っていたら、バンに乗っていることは分からないかもしれない。

5. フォルクスワーゲン・マルチバン
5. フォルクスワーゲン・マルチバン

1.5Lガソリンと2.0Lディーゼル、そしてゴルフGTIの2.0 TSIというパンチの効いたエンジンラインナップが、マルチバンを強力に支えている。また、PHEVも用意され、電気のみでの航続距離は約50kmとされている。

室内は、他のミニバンが夢見るような柔軟性を備えた、広大な空間だ。7つのシートがあり(少なくすることも可能)、後部座席はスライド、回転、折り畳みが可能だ。シートを取り外せば(1脚15kgと決して軽くはない)、週末に引っ越しサービスを行えるほどの広さになる。また、収納スペースも充実しており、家事や育児に追われながら溜め込んでしまった小物や雑貨を隠すことができる。さらに、スライド式のサイドドアを採用したことで、乗り降りは自由自在だ。

問題があるとすれば、それはゴルフやID.3と同じように、照明のないタッチセンサー式のヒーター/ベンチレーションコントロールだろう。研究開発を重視する企業にとって、このセットアップは人間工学的に悪夢のようなものである。

それ以外は、広々として快適な、見事なピープル・キャリアである。しかし、価格は4万ポンド(約685万円)強から始まり、7万ポンド(約1200万円)という理解に苦しむ領域にまで踏み込んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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