新体制下での第1弾 スマート#1 プレミアムへ試乗 高完成度な電動ハッチバック

公開 : 2023.06.01 07:05

新体制へ生まれ変わったスマートによる、第1弾となるBEVが登場。航続距離や乗り心地など、完成度は高いと英国編集部は評価します。

ジーリー・ホールディングスとの協働

新しいスマートが登場した。若い世代ならすぐに納得できると思うが、モデル名はシャープ・ワンではなく、ハッシュタグ・ワンと読む。開発陣がどんな年齢層をターゲットにしたのか、読み取ることができる。

SNSへこびたような名前だが、中身はしっかりしている。優れたバッテリーEV(BEV)だといっていい。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

スマートは、腕時計メーカーのスウォッチと、当時のダイムラー・ベンツが1994年に立ち上げた自動車ブランド。しかし、充分な利益を得られずスウォッチは撤退。ルノーの協力も得ながら継続されてきたが、満足できる結果は残せないと判断された。

そこでメルセデス・ベンツは、ジーリー・ホールディングスとの合弁会社を2019年に設立。中国のローコストなBEV技術と欧州の経験を融合させ、新たなモデルが作られることになった。

その最初の成果となるのが、このコンパクト・ハッチバックの#1だ。実容量で62kWhの駆動用バッテリーがフロア下に敷かれ、ボディサイズはフォルクスワーゲン・ゴルフと同等。よりSUVライクな#3も控えている。

スマート#1のパワートレインは271psを発揮する永久磁石同期モーターで、後輪を駆動する。高性能なスマート#1 ブラバスには、フロント側に156psの2基目のモーターが追加され、システム合計で428psを発揮する。

このクラスのBEVとしてはお手頃な価格

#1の航続距離は439kmがうたわれる。急速充電能力は最大で150kW。ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリックなどと、充分に渡り合える性能を持つ。

英国価格は、エントリーグレードのプロ+で3万5950ポンド(約578万円)から。上級のプレミアムを選ぶと3万8950ポンド(約627万円)へ上昇するが、このクラスのBEVとしてはお手頃な部類に加えられるだろう。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

AUTOCARでは2022年9月に#1へ試乗しているが、まだ未完成だったのか、ソフトウエアにはバグが残り、シャシーのセッティングも整っていなかった。今回試乗したのは左ハンドルの欧州仕様。前回のモヤモヤを忘れるほどの、好印象を残してくれた。

シンプルなダッシュボードには、大きなタッチモニターが据えられているが、デバッグを終えたソフトウエアは直感的に操作できる。頻繁に使う機能は2回もタップすればアクセスできるし、アイコンは大きく反応も素早い。

エアコンの操作メニューは画面の下部に常時表示され、すぐに触れられる点もプラス。スポティファイをはじめ、多くのアプリも実装され高機能だ。

ただし、キツネのイラストがボールで遊んだりするアニメーションが背景で描かれるのだが、子供は楽しめるかもしれないが、運転中は気が散ると思う。また、試乗車はアップル・カープレイとアンドロイド・オートを利用できなかった。

完全な英国仕様では、スマートフォンとの連携機能に対応するという。後日確かめてみるしかない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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