1904馬力の電動ハイパーカー リマック・ネヴェーラへ試乗 価格3億8640万円 後編

公開 : 2023.06.04 08:26

ブガッティ・シロンを上回る馬力を繰り出す、電動ハイパーカーのネヴェーラ。英国編集部が一般道で走りを確かめました。

英国の法を侵さない速度域でも運転が楽しい

「誰しも妥協のないクルマを目指すと思います。しかし、結局は妥協があるんです」。リマックの主任技術者、マティヤ・レニッチ氏が話す。エンジニアらしい、現実的で率直な意見だと思う。

だとしても、英国の法を侵さない速度域でも、リマック・ネヴェーラは運転が楽しい。穏やかなドライブモードのままで。

リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)
リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)

彼が続ける。「ソフトウエアを変えるだけで、幾つもの個性を与えられます。それが、わたしたちがお見せしたかったことの1つです」

「予め設定した数種類のモードを実装しています。前後のトルク分配やダンパーの減衰力、アクティブエアロ、ステアリングホイールやアクセルペダルのレスポンスなどが変わります。小さなことですが、実際に変化を感じ取れると思います」

カタログ上の航続距離、547kmへ近づけるには、レンジ・モードを選ぶ必要がある。リアモーターのトルクが制限され、ほぼ前輪駆動状態になるが、運転は楽しいままだ。

回生ブレーキには3段階の強さがある。レニッチはミディアムが好きだというが、筆者も丁度いいと思った。

ステアリングは極めて鋭い。車高が低くシャシーは強固で、2150kgある車重を完全に制御下においている。電気モーターらしい、ヒューンという甲高い響きが聞こえる。リマックは音響にもこだわっている。

ドライブモードは5つあり、クルーズ、スポーツ、トラック(サーキット)、ドリフトと、徐々に本来のパワーが開放されていく。ドリフト・モードが最もアグレッシブな特性なものの、フロントモーターのトルクは制限されるそうだ。

4基のモーターで最高出力1904ps

「クルマをゼロから開発する時は、まずタイヤからスタートします。どれだけグリップ力を得られるのか一定のデータがあるので、それを僅かに上回るパワートレインの設計を導けるのです」

ネヴェーラには、ミシュラン・パイロットスポーツ4が選ばれた。フロントが275/35 R20、リアが315/35 R20という、スーパーカー・サイズだ。

リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)
リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)

リアの駆動用モーターは、1基当たり635psを発揮。フロント側は299psと、リアの半分以下のパワーしかない。これがそれぞれ2基づつ載り、システム総合で1904ps、電気的な表現では1400kWを実現している。

フロントタイヤは、クルマの進路を変える役割も担う。加速時は、重心がボディ後方へ移動する。リアタイヤの方が、より多くのパワーを受け止められる。

「鋭く加速する状況では、ほぼすべての荷重がリアタイヤに掛かるため、多くのトラクションを得られます。フロントモーターのパワーとトルクを増やしても、トラクションが足りず、フルスロットル時には活かしきれません」。レニッチが説明する。

ネヴェーラの能力を、完全に引き出してみたいところ。後日、改めてクルマをお借りするしかない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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