クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404  1960年代の凸型ボディ 後編

公開 : 2023.06.11 07:06

1960年代の欧州製ファミリーサルーンの典型といえた、フィアットとプジョー。凸型ボディの2台の魅力を英編集部が振り返ります。

当時の魅力が色濃く感じられる1500L

プジョー404とフィアット1500Lという2台のサルーンを並べると、見た目から当時の魅力を色濃く感じるのは後者だろう。404の方が堅牢性では上なはずだが、より表面的な仕上げが美しく、しっかりしていて、四輪ディスクブレーキなど内容でも勝っている。

1500Lのドアを閉めると404より硬い音がし、車内のフロアにはカーペットが敷かれている。ベンチタイプのシートは、上質なクロスで仕立てられている。

フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)
フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)

フロントグリルの造形は繊細。クロームメッキがふんだんに用いられたボディトリムも含めて、6気筒エンジンを搭載した、同じボディをまとう上級の兄弟モデルと目立った遜色はない。

フィアットは、メーターパネルへ警告灯をいち早く導入した自動車メーカー。ドライバーの正面には、3面のアナログメーターのほかに、10点の警告灯が整列する。横に長いリボンタイプのスピードメーターが、生まれた時代を映している。

一方、プジョーは404の頃に円形のメーターへ回帰した。見比べると、少し殺風景にも感じられる。シートは実用性重視のビニール張りで、ルーフには標準でルーフラックのマウントポイントが備わる。

右膝の横には無骨な見た目のハンドブレーキ・レバーが伸びる。ステアリングホイールの角度は、どうも筆者にはしっくりこない。コラムレバーは、現代のようにヘッドライトとウインカーのスイッチを兼ねている。

優しい乗り心地がいかにもプジョーらしい

404も1500Lも、5シーターのファミリーサルーンとして車内は広い。ウェストラインが低く、ピラーが細く、どの方向にも視界は良好。スクエアな形状でボディサイズを掴みやすい。

1500Lにはコラム・マニュアルが組まれ、軽快に次のギアを選べる。乗り比べるとわずかに活発で、1速から4速までのギア比が良く考えられており、粘り強く運転しやすい。比較的大きなボディに小さなエンジンを載せていることを、実感させにくい。

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)

たくましいわけではないものの、エンジンは活発に回り、現代の交通でもストレスは感じにくい。タコメーターがなく、回転数がわからないけれど。

404のエンジンも、滑らかで静かに回る。同じく滑らかに仕事をする3速オートマティックのおかげで、穏やかな性格が強調される。とはいえ、決して遅いわけではない。

こちらも躊躇せずに吹け上がり、1500Lより100kg以上軽い車重に独立懸架式のフロント・サスペンションが融合し、安定してひたひたと走る。ロードノイズが小さいため、実際以上に快適にも感じる。

優しい乗り心地は、いかにもプジョーらしい。平滑な路面以外では、少々落ち着きに欠ける1500Lからの明確な強みといえる。

2台ともボディはエッジが立ち、ギア比は低めで、風切り音やエンジンノイズは大きめ。全体的な洗練性では、404の方が勝る。1500Lは操縦性で及ばず、保守的な設計が印象の足を引っ張っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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