クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404  1960年代の凸型ボディ 後編

公開 : 2023.06.11 07:06

クルマらしい形をしたクルマ

1500Lの土台は1950年代の設計で、モノコック構造の技術は黎明期にあり、必要以上に車重はかさんだ。低速域ではステアリングホイールが重く、曖昧さもある。

コーナーではラインを大きく乱すような不整がない限り、ボディを傾けながら気持ちよく旋回できる。しかし少し気張ると、アンダーステアが顔を出す。

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)

フィアットは、技術的に工夫を凝らしたコンパクトカーを得意としていた。実用性や簡素さを評価するファミリー層へ向けた大きな1500Lは、決して悪いモデルではないものの、強みを活かしきれずに作られたように思う。

一方、404のステアリングは軽快で正確。タクシーとして活躍した理由も理解できる。快適性と信頼性を重視するユーザーのために開発された、完成度の高い4ドアサルーンだといっていい。

プジョーは、癖の強いシトロエンDSに対するアンチテーゼ的に、秀でた洗練性を従来的なパッケージングで実現できることを404で証明した。1975年までに280万台が販売された結果が、高い完成度を物語っている。

1970年代から1980年代にかけて、クルマの絵を子供に描かせたら、大抵は凸型のボディに丸が2つと決まっていた。たとえその存在を知らなくても、プジョー404のシルエットを自然に紙へなぞっていた。あるいは、1500Lを。

筆者は、過去に404を所有していたことがあるが、まさにクルマらしい形をしたクルマだった。その事実が、この2台のサルーンへ抱く不思議な共感を要約しているのかもしれない。

協力:ヨーロピアン・クラシックカー社

プジョー404とフィアット1500L 2台のスペック

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)

英国価格:1200ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約241万円)以下(現在)
販売台数:約280万台
全長:4420mm
全幅:1657mm
全高:1454mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:19.9秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1043kg
パワートレイン:直列4気筒1618cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:77ps/5500rpm
最大トルク:13.2kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック

フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)

英国価格:1000ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約193万円)以下(現在)
販売台数:約20万台
全長:4489mm
全幅:1619mm
全高:1467mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:17.0秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1150kg
パワートレイン:直列4気筒1481cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/5400rpm
最大トルク:12.2kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)
フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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