2.0Lターボ・クーペ比較 日産フェアレディZ 三菱スタリオン 200ZRはZ31のベスト? 後編

公開 : 2023.06.17 07:06

日本限定だった直6ターボを搭載するZ31型の200ZR。同時期のライバル、スタリオンと比較しながら英国編集部が振り返ります。

スポーツクーペ作りに対する経験の豊富さ

三菱スタリオンのG63B型シリウス・エンジンは、圧縮比が7.6:1と低い。ターボのブースト圧が高まるまで、生気に欠けた印象がある。2500rpm以下ではトルクが細く、3500rpmまで回しても目立った変化は得られない。

1980年代後半らしい、パンチ力のあるドッカンターボ的ではない。しかしそれ以上の回転域に達すると、メカニカルな高音を響かせながら、本領が発揮される。タービンの回転を保つように適切なギアを選択し続ければ、積極的な三菱を堪能できる。

三菱スタリオン EX(1982〜1990年/英国仕様)
三菱スタリオン EX(1982〜1990年/英国仕様)

とはいえ、RB20DETエンジンは傑作だと実感する。同時に、日産のスポーツクーペ作りに対する経験の豊富さも、フェアレディZ 200ZRを通じて伝わってくる。

ステアリングラックはラック&ピニオン式で、反応はタイト。手のひらへ充分に情報が届く。今回の例では、モモ社のステアリングホイールへ交換されており、パワーアシストに対して小径過ぎた。実際より、操舵には力が必要だった。

スタリオンはボール・ナット式と旧式で、ギャランΣをベースにする古さの一端が見える。切り始めが軽すぎ、ステアリングホイールは大きすぎ、スポーツカーとしてはレシオがスローだ。

安定しないほどテールが身軽という訳ではないものの、フロントが重く、オーバーステアへ転じやすい。ドライバーが楽しめるともいえるが、狙い通りに操縦するには、もっと応答の素早いステアリングが欲しくなる。

カーブが連続する道で楽しいスタリオン

それでも、片手で一気にカウンターステアを当てることは可能。意欲的で確実に腕を動かせば、スタリオンのウェッジシェイプ・ボディを振り回せる。

ドライビングポジションはやや高めながら、車内は広々としていて視界に優れる点は強み。シフトレバーとブレーキペダルの感触は悪くない。だが、クラッチペダルはストロークが長すぎる。ステアリングホイールは不自然に胸元へ近い。

三菱スタリオン EX(1982〜1990年/英国仕様)
三菱スタリオン EX(1982〜1990年/英国仕様)

200ZRへ乗り換えると、すべてが自然ですぐに馴染める。傑作の初代、240Zの後継であることを実感させる。人間工学というレイアウトの基本を重視する姿勢が、3代目でも貫かれている。

ただし、英国のカーブが連続する一般道で、より楽しいのはスタリオン。両車ともサスペンションは適度に引き締まっているが、僅かに軽い印象があり、身のこなしがタイト。ドライバーの遊び心に応えてくれる。

200ZRも、コーナーを機敏に縫っていける身軽さを備える。重心位置が低いのか、横方向のグリップ力では勝る。サーキットでは速いかもしれないが、スタリオンの方がいつもの道では笑顔になれる。

この違いは、正直なところ不思議ではある。車重は1310kgに対し1308kgでスタリオンの方が軽いとはいえ、たった2kgだ。同じ2+2のシートレイアウトだが、200RZの方がホイールベースで約75mm、全長も約130mm長いためかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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