普段の移動を心地良く フォルクスワーゲンID.4 GTX 長期テスト(最終) 気を揉んだソフト

公開 : 2023.06.10 09:45

日本でも販売が始まったVWのEV、ID.シリーズ。クロスオーバー「4」の実力を、英国編集部が長期テストで確認します。

積算2万3599km 間髪入れず放たれるパワー

2万km以上をともにしたクルマとのお別れは、なかなか寂しい。GTXを掲げるID.4が、フォルクスワーゲンの主張通りグランドツアラーとして現実的な仕上がりにあるのか、じっくり堪能してきただけに、なお一層といえる。

筆者にとって、ID.4 GTXで最も満足していたのが、パワートレインの力強さ。2基の駆動用モーター合計での最高出力、298psは伊達ではなかった。0-100km/h加速6.2秒という俊足を簡単に引き出せ、軽くないボディを活発に動かすことができた。

フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)

アクセルペダルの操作へ間髪入れず放たれるパワーに、いつも満たされた。一般道の流れをリードできるゆとりが、運転する自信へ結びついていた。

ID.4 GTXは、フォルクスワーゲンのグランドツアラーらしい性質も備えていた。路面を問わず、長距離でも快適な乗り心地はその筆頭。実用性も高く、長期休暇の自動車旅行にも問題なく活躍してくれた。

航続距離も、現代のバッテリーEV(BEV)としては納得できるものだった。内燃エンジンで走る同クラスのクロスオーバーには、遥かに及ばないとしても。

過ごしやすい温かい時期なら、一度の充電で走れる距離は440km前後が通常。日常的な利用での平均は418km。最も条件が良かった時は、454kmも走れている。

往復で240kmもある、遠距離通勤にも耐えてくれた。長期テストで目指した最も遠い目的地は片道402kmで、ID.4 GTXにとって難題ではなかった。カタログ上の航続距離は481kmがうたわれている。

気を揉まされたソフトウエアの完成度

今回の経験からお伝えしたいことの1つが、ヒートポンプ式エアコンの有効性。英国仕様のID.4 GTXでは1050ポンド(約17万円)のオプションで、少々お高いアイテムだが、冬場の快適性が大きく変わってくる。

同等の車内温度を保つ場合、40%も従来のエアコンよりエネルギー消費が少ないという。長期テストでは、ヒートポンプではないエアコンが装備されたID.5へ乗る機会があったが、駆動用バッテリーの減り方に明らかな違いがあった。少し動作音が大きいけれど。

フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)

ただし、ID.4 GTXは完璧だったわけではない。常にリラックスして運転できたわけではなかった。

その原因を作っていたのが、実装されるソフトウエア。何度かお伝えしてきたが、インフォテインメント・システムや運転支援システムの完成度に、気を揉まされるタイミングが少なからずあった。

特にインフォテインメント・システムは動作が鈍く、タッチモニターの操作に対する反応もいまひとつ。充電ステーションが表示されるナビや、アップル・カープレイへの対応など、高機能ではあるものの、率先して利用したいと思えるソフトではなかった。

タッチセンサー式のインターフェイスも同様。ダッシュボード中央とステアリングホイール上に据えられた両方で、反応が悪く扱いくいと感じさせた。新しいポロのエアコン用操作パネルが、マイナーチェンジ時にID.4へも採用されることを期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フォルクスワーゲンID.4 GTXの前後関係

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