日本は「盗難車天国」? やられ損、脱する術は 国会へ法案提出 岸田総理「前向き」
公開 : 2023.06.01 17:15
車両盗難を厳罰化にする会 署名1万7000人
はじまりは2022年夏。「車両盗難を厳罰化にする会」(代表:kun AE86)がchange.orgにて署名活動を開始したことにさかのぼる。
車両盗難の厳罰化に興味を持ってもらえそうな元レーサーやスポーツカー好きを公言しているクルマとのかかわりが強そうな与党の国会議員何人かに声をかけたところ、与党からの反応はゼロ。
かつてトヨタ自動車に勤めていた経験を持つ国民民主党の浜口誠議員から厳罰化への活動に協力するという回答があった。
そして12月22日、集まった約1万7000名分の署名をもって警察庁/法務省/外務省/経産省/国交省、財務省の合計6省庁をまわって厳罰化への要請をおこなう運びとなった。
警察庁に要請する際には国民民主党の党首玉木雄一郎氏も同行。署名に参加した方々への思いを少し紹介したい。
「知人のホンダ・インテグラ・タイプRが盗まれ犯人が逮捕されたが前科3犯で仮出所中に盗難し人身事故を起こし逮捕。コレで求刑5年はおかしすぎる。再犯しないように厳罰化を望む」(東京都)
「7年前にEK9シビックを盗難された。犯人は余罪90件以上の日本人。裁判は起こせても支払い能力のない人間が犯人の可能性が大ゆえ現状の日本の法律ではやられ損。日本のクルマ文化を守ることはもちろん、個人の資産を脅かすおこない。厳罰化は急務」(長野県)
「国産の貴重なレトロカーが盗難に遭っているのに対応が甘過ぎると感じるし、現在でも盗難されているのになぜ動かないのか理解できない」(愛知県)
「人様の愛車を盗んで生計を立てているのは外道。捕まってもたった数年で出所し、慰謝料は踏み倒しだ。もう厳罰化で懲役15年からで罰金は1000万円じゃないとダメだ」(東京都)
4月 岸田総理「前向きに対応していく」
6省庁を回っての「厳罰化要請」をおこなった際には、筆者(加藤久美子)もメディアとしてではなく、活動に賛同するメンバーの一人として参加した。
各省庁の担当者に盗難の現状をお伝えしたわけだが、日本の文化ともいえる国産旧車が毎日のように盗まれて即座に違法ヤードで解体され、中間業者を経てネットオークションやフリマサイトで流通していることなどは6省庁の皆さんご存じなかった模様。大変驚いておられた。
「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」なる組織(警察庁/財務省/経産省/国交省ほか、日本自動車工業会/全国レンタカー協会/日本オートオークション協議会などの民間団体が参加)が約20年前から活動を開始し、公式サイトも所有しているが、自動車盗難の現状や防止対策などの内容が現状に全く即しておらず役立たずであることなども報告した。
ちなみにわれわれの活動や発言に関係しているかは不明だが、厳罰化を求めて6省庁をまわった約1週間後の2022年12月30日をもって公式サイトがひっそりと閉鎖されていた。
サイト運営に公金が使われていたかは不明だが、実質的に公式サイトを運営していたのは日本損害保険協会である。
内容は年に1〜2回、盗難認知件数などのデータが更新される程度で、盗難防止のための6か条は「施錠する」「夜間も明るい場所に駐車する」「車内に貴重品を置かない」「イモビライザーを装備する」などほぼ20年前と変わっていなかった。
そこには、昨今猛威を振るうCANインベーダーはもちろん、リレーアタックすら紹介されていない。
当然だが、国産旧車盗難が増えているなどの実態にも全く触れられておらず、自動車盗難の現状を把握していなかったと判断していいだろう。
こんな状態では本当に有効な盗難防止対策も、厳罰化への対策など無理な話だ。
4月3日の参議院決算委員会では浜口議員から岸田首相に「自動車窃盗の厳罰化をぜひ検討してほしい」と要望した。岸田首相は「より幅広い関係省庁が連携する必要性を感じる。連携のあり方についても考えながら、官民の一体の取り組みの必要性は感じる。どういう対策をとるべきなのか、政府として考えたい」と、前向きな回答を出している。