未来が楽しみになる技術 BMW iX 長期テスト(8) 車重を忘れるスポーツ・モード
公開 : 2023.06.11 09:45
エンジンを売りにする上級ブランドが発売した、フラッグシップBEVのiX。英国編集部が長期テストで実力を検証します。
積算1万2255km 良い意味で普通に乗れる
今回は普段のマーク・ティショーに代わって、大きなSUVが必要になった筆者、アラステア・クレメンツにレポートさせていただきたい。妻と2人の娘、2匹の犬、沢山の荷物を運ぶことになり、快くBMW iXの鍵を貸してくれた彼には感謝だ。
高額な値札が付いているにも関わらず、最近のロンドンではiXをしばしば目撃する。個性的なスタイリングを持つ電動SUVが、ありきたりの毎日を活気づける存在なのか、革新的な次世代の自動車体験を味わわせてくれるのか、わたしも以前から興味を抱いてきた。
ローズ・ゴールドのボディトリムに、カットガラスがあしらわれたギアセレクターやパワーシートのスイッチ類など、iXには特別さを感じさせる特徴に事欠かない。ドライブモードに応じて、車内には異なるサウンドも響く。
しかし、能力に長けたバッテリーEV(BEV)として、それらの要素がなくても高い評価を与えられると実感した。大型なラグジュアリーSUVとして、従来と変わらず、良い意味で「普通」に乗ることができる。
車内空間は広く、特にリアシート側はゆとりがある。乗り心地は快適で、走りは速く安定しており、内燃エンジンの従来的なモデルと比較しても、不満を感じる要素はなかった。巨大な駆動用バッテリーのおかげで航続距離は長く、利便性も担保されている。
車重を忘れるほど軽快なスポーツ・モード
ただし、容量の大きい駆動用バッテリーは、充電にも長い時間を必要とする。筆者の自宅にある充電器は、最速でも7.5kWhまでしか電気を送れないため、100%へ回復させるのに12時間以上が必要だった。
渋滞に巻き込まれながら、家族全員と沢山の荷物を積み、目的地までの約240kmを4時間半かけて走らせた結果、駆動用バッテリーには40%の電気が残っていた。気温が低かったことを踏まえると、悪くない結果といえる。
その日の晩は、公共の充電ステーションが近場になく、コンセントへ繋いで充電。自宅まで戻るのに充分な電気を、翌朝には蓄えることができた。
帰り道は、混雑する幹線道路を避けて、田園地帯を縫う一般道へ。ドライブモードをスポーツへ切り替えると、車重を忘れさせてくれるほど走りが軽快に一変。息を呑むような力強い加速で、大型トラックの追い越しも余裕でこなせることに感心させられた。
リアシートが広々しているだけに、荷室容量はボディサイズから期待するほど大きくはない。ツーピースのトノカバーも使い勝手に優れるとは思えないが、フロアの位置的に荷物の積み込みは容易に感じられた。
リアシートの背もたれはボタン一発で折りたたまれ、広大な荷室が姿を表す。実用性も悪くない。