むき出しのオイルクーラー NSU 1000 TTS 1960年代のジャイアントキラー 後編

公開 : 2023.06.18 07:06

1度運転すればNSUを忘れることはない

かつてラリー・ド・ポルトガルの舞台となり、ヒルクライムレースにも適したシントラ郊外のワインディングへ進む。つづら折りのヘアピンが連続するものの、ラック&ピニオン式のステアリングラックが、リニアな反応で安心させてくれる。

穏やかなアンダーステアから、タックインへ切り替えせる。コーナリングラインを攻めることはしなかったが、地元のトゥクトゥク・タクシーを負かすことはできた。

NSU 1000 TTS(1969年式/欧州仕様)
NSU 1000 TTS(1969年式/欧州仕様)

舗装が傷んだ区間でも、サスペンションは路面からの入力をしなやかに吸収してくれる。路面電車の線路で進路が乱されることもない。心配していたほど、鋭い衝撃で悩まされることはなかった。

次のカーブを予想しながら操る限り、1000 TTSの運転は難しくないようだ。ただし、耳栓が不可欠ではある。

レースを現役で戦っていた時代の写真を見返すと、カーブでは内側の1輪が浮いた状態にあることが珍しくない。積極的な運転に応えてくれるが、攻撃的なわけではない。忠実に反応し、喜びでドライバーを満たしてくれる。

雨が降っている条件なら、違った印象になると思うが、晴れている限り1000 TTSは楽しく扱いやすい。見た目の通り、印象的な個性も宿している。1度運転すれば、今はなきNSUを忘れてしまうことはないだろう。

協力:マヌエル・フェラオン氏、アデリーノ・ディニス氏
撮影:Bernardo Lucio(ベルナルド・ルシオ)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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