むき出しのオイルクーラー NSU 1000 TTS 1960年代のジャイアントキラー 後編
公開 : 2023.06.18 07:06
1度運転すればNSUを忘れることはない
かつてラリー・ド・ポルトガルの舞台となり、ヒルクライムレースにも適したシントラ郊外のワインディングへ進む。つづら折りのヘアピンが連続するものの、ラック&ピニオン式のステアリングラックが、リニアな反応で安心させてくれる。
穏やかなアンダーステアから、タックインへ切り替えせる。コーナリングラインを攻めることはしなかったが、地元のトゥクトゥク・タクシーを負かすことはできた。
舗装が傷んだ区間でも、サスペンションは路面からの入力をしなやかに吸収してくれる。路面電車の線路で進路が乱されることもない。心配していたほど、鋭い衝撃で悩まされることはなかった。
次のカーブを予想しながら操る限り、1000 TTSの運転は難しくないようだ。ただし、耳栓が不可欠ではある。
レースを現役で戦っていた時代の写真を見返すと、カーブでは内側の1輪が浮いた状態にあることが珍しくない。積極的な運転に応えてくれるが、攻撃的なわけではない。忠実に反応し、喜びでドライバーを満たしてくれる。
雨が降っている条件なら、違った印象になると思うが、晴れている限り1000 TTSは楽しく扱いやすい。見た目の通り、印象的な個性も宿している。1度運転すれば、今はなきNSUを忘れてしまうことはないだろう。
協力:マヌエル・フェラオン氏、アデリーノ・ディニス氏
撮影:Bernardo Lucio(ベルナルド・ルシオ)