BYDアット3 詳細データテスト 英国でも快適な乗り心地 先進的なバッテリー 操作面は改善が必要
公開 : 2023.06.10 20:25 更新 : 2023.07.04 00:17
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
BYDは1995年に設立されたが、もとは自動車メーカーではなかった。まずはバッテリーメーカーとしてスタートし、家電向けの供給は現在も事業の一環だが、EV向けもビジネスのコアとなっている。テスラにもBYD製バッテリーを使用しているものがあり、多くの欧州メーカーとも商談中だ。
その傍らで、BYDは自動車事業にも参入し、乗用車やバスを製造するようになる。ピープルムーバーでは、欧州でもビッグプレーヤーとなっている。バスをマジマジと見ることはないだろうが、BYDのドライブトレインのテクノロジーはそこに由来している。
バスに続いて乗用EVにも本腰を入れはじめたBYDだが、2014年に発表し、欧州市場へ導入したE6は、法外に高い値付けでありながら洗練に欠けるクルマだった。その後を受けるのが、今回のアット3だ。
自社製新開発のe−プラットフォーム3.0を使用するが、これはいわゆるプラットフォームというよりはツールの集積といったところ。800Vテクノロジーに対応し、前輪駆動も後輪駆動も、そして四輪駆動も選択できる。バッテリーもさまざまなサイズを搭載可能だ。ただしアット3は、400Vの前輪駆動のみだ。
起源がバッテリーメーカーというだけに、アット3のバッテリーは自社開発で、BYDではブレードバッテリーと呼んでいる。現在、ほとんどのEVはニッケル・マンガン・コバルトかニッケル・コバルト・アルミニウムを使用しているが、ブレードバッテリーはリチウム・鉄・リン酸塩だ。
その利点は、高価なレアメタルのコバルトが必要ないことと、最大容量までチャージしても問題がないため、安全のためのバッファの必要性が低いこと。その代わり、総容量と実用容量の差は小さい。ほかのリチウムイオンバッテリーに比べ、性能低下が遅いのも特長だ。
いっぽうで、エネルギー密度は低く、同じ容量では重量がかさんでしまう。また、出力と充電の双方とも電力の限界がある。
このセグメントのクルマなら、さほど大出力は必要ない。クラス標準的な204psというスペックであれば、このバッテリーの能力で十分まかなえる。ただし、急速充電のピークが88kWというのは、競合に対して見劣りする。
電力系は、8イン1エレクトリックパワートレインシステムと銘打たれたもの。これはモーターとバッテリーマネジメントシステム、インバーター、車載チャージャー、そしてさまざまな制御モジュールをひとつにまとめたものだ。
クロスオーバーSUVのアット3だが、サイズはとくに大きいものではない。4455mmの全長は、キア・ニロEVと同程度で、フォルクスワーゲンID.3やクプラ・ボーン、プジョーe−2008などをわずかに上回る。スマート#1やMG4EVはアット3よりやや小さいが、この辺も競合車種に数えられる。
エクステリアは無難なデザインと言えるかもしれない。手がけたのは、かつてアルファロメオやアウディで腕をふるったウォルフガング・エッガーで、欧州のユーザーを念頭に置いてデザインしたとされている。とはいえ、最初に発売されたのは中国向けモデルで、昨年発表されたそれは元プラスという車名が与えられている。
バンパーのエアベントはメルセデス風で、模様が型押しされたシルバーのDピラーはクプラ・ボーンに似た処理。欧州車を強く意識していることが感じられるスタイリングだと言える。