BYDアット3 詳細データテスト 英国でも快適な乗り心地 先進的なバッテリー 操作面は改善が必要

公開 : 2023.06.10 20:25  更新 : 2023.07.04 00:17

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

アット3の価格は、エントリーモデルのアクティブが3万6490ポンド(約631万円)、その上位のコンフォートが3万6990ポンド(約640万円)、テストしたデザインが3万8990ポンド(約675万円)。表面上は、じつに素直なラインナップだ。

ところが、もっと詳しく見ていくと、上位グレードでもアップグレード内容はそれほど多くないことに気づく。コンフォートには11kW三相チャージャーが追加されるが、英国では三相電源のある家がほとんどないので、そのアドバンテージを享受できるひとは少ない。

知名度の低いブランドとしては、残価率はそれほど悪くはない。そうはいっても、先行するキアよりは低くなってしまう。
知名度の低いブランドとしては、残価率はそれほど悪くはない。そうはいっても、先行するキアよりは低くなってしまう。

デザインには電動テールゲートや空気清浄システムが装着される。タッチ式ディスプレイは、下位グレードの12.8インチから15.6インチへ拡大されるが、どちらのサイズでも回転機構は備わっている。ヒートポンプは全車に標準装備だ。

それ以外は、アルミホイールからインテリアの仕様や装備までまったく同じ。であるから、アット3の購入を検討するなら、おすすめは最廉価グレードのアクティブだ。

同等装備のキア・ニロEVやクプラボーンは4万ポンド(約692万円)を超える。ただし、スマート#1プロ+とMG ZS EVトロフィーなら、より安く買える。

しかし、弱点は残価率の低さで、それを踏まえると必ずしもバーゲンプライスとはいえなくなる。英国のディーラーでローンを組むと、月々の支払額がルノーメガーヌの最上位グレードであるアイコニックより20ポンド(約3460円)安いだけだ。

経済性の計測には難ありで、車載の電費計は性能テスト中に19km/kWhを表示するなど、まったくもってあてにならなかった。5.5km/kWhという平均値は、走行距離と充電量から算出した数字だ。ボーンやニロEVのテスト時より若干悪いが、それでも航続距離は323kmに届く計算だ。もっとも、フル充電すれば418km走るという公称データは、現実的な数字ではない。

急速充電のピーク値は88kWというが、これもむしろ残念な部類に入る。ただし、実測した平均充電速度は、100kWチャージに対応するシトロエンe−C4Xをわずかながら上回った。それでも、MG4EVロングレンジにはかなりの差をつけられている。

今のところ、ディーラーの数は少ない。英国では4軒だが、年内には30、2025年には100まで増やす計画だという。保証は他社と張り合える内容で、4年/12万kmの総合保証のほか、バッテリー容量70%保証は8年/20万kmに設定されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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