英国初 160km/h超の量産車 ヴォグゾール30-98 OEタイプ 誕生100年を5台で記念 後編

公開 : 2023.06.24 07:06

英国の量産車として初めて、160km/hの最高速度を達成したヴォグゾール。誕生100周年を記念し、英編集部が貴重な5台をご紹介します。

洗練され安定した走りで想像以上に速い

販売が低調になったヴォグゾール30-98は、最後の生産ロットに当たる25台が、値引きされながら1928年までにさばかれた。ヴォグゾール自体は、1925年10月にアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)へ買収されている。

最終的にOEタイプは312台が生産され、30-98全体で数えると丁度600台になり、3割以上が残存していることには驚かされる。今回は5台にお集まりいただいたが、コーチビルダーによる特別なボディを載せていた事実が見えて興味深い。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ・ヴェロックス・ツアラー(1925年式/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ・ヴェロックス・ツアラー(1925年式/英国仕様)

順にご紹介していくと、ジョン・ワース氏のOEタイプは1925年式。純正となるヴェロックス・ボディのツアラーで、オリジナルと呼べる状態にある。シャシー番号なども一致し、1935年から2000年までは2番目のオーナーによって維持されてきた。

2014年には、2年をかけたレストアが施されている。ステアリングホイールの位置が高く、アルミニウム製のダッシュボードには5枚のメーターが並ぶ。運転席側にリアブレーキのレバーがあり、ドアは助手席側だけだ。

逆パターンのH型オープンゲートが切られた、4速MTのレバーが右膝の横に来る。ペダルの配置は中央がアクセル。慣れるまでに数分は必要だろう。

感覚を掴めば、洗練され安定した30-98の走りを楽しめる。実際、想像以上に速い。スピードが乗ると、ステアリングホイールが驚くほど軽くなるが、遊びは少ない。

リア・ブレーキを効かせるには、レバーをかなり強く引く必要がある。それでも、すべての操作系は滑らかで、反応は正確だ。

現在では唯一のサルーン・レプリカ

チャーリー・ビショップ氏がオーナーのOEタイプは1926年式。ボディはコーチビルダーだったクリントン社による、サルーンのレプリカが載っている。

フロントガラスは左右で分割され、運転席側にもドアがある。オリジナルは40台が作られているが、1台も残っていないという。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ・クリントン・サルーン(1926年式/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ・クリントン・サルーン(1926年式/英国仕様)

ビショップのクルマも、27年前に納屋で発見された時点で、ボディは完全に腐っていたそうだ。レプリカながら、現在では唯一の30-98のサルーンとなる。

インテリアには高級感が漂い、リアシート側の空間も広い。当時のベントレーでも、叶わない水準にあったといえる。先細りのボディ形状のため、フロントシート側は足元が狭い。リアブレーキのレバーが、シフトレバーと一緒に車内へ並んでいる。

発進させると、トルクが太い印象はヴェロックス・ボディと同等。エンジンのブロックとヘッドもレストア時に新調されており、加速力は鋭い。ボディとフレームが別体のおかげで、走行中は驚くほど静かでもある。

ティム・ジョーンズ氏のOEタイプは1925年式。現在はウェンサム社のボディが載っているが、オリジナルはクリントン・サルーンだった。1952年に芝刈り機として働いている状態で、ヴィンテージ・スポーツカークラブ(VSCC)の会長に発見されたという。

その後は、1930年代のレーシングカーに似せたボディへ改造されている。ジョーンズが購入したのは1985年で、その時点でシャシーは短く加工され、補強用のクロスメンバーは切り取られていたそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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