乗り心地を極める1台 ロールス・ロイス ベントレー レンジローバー BMW 5台直接比較 後編

公開 : 2023.06.17 09:46  更新 : 2023.06.19 08:40

2023年でも完璧さを得ることは困難

ノイズ測定器で、80km/h走行時の車内の音量を計測したところ、平均で一番静かだったのがファントムVIIIの54dBA。フライングスパーが58dBAで、i7が59dBA、レンジローバーは60dBA、シルバークラウドは67dBAという順だった。

ところが、アスファルトの剥がれた穴や橋桁の継ぎ目で、ファントムVIIIはタンタンと音を伝える。強い負荷でサスペンションのバンプストッパーへ当たった時のマナーも、褒めにくい。

ロールス・ロイス・ファントムVIII(英国仕様)
ロールス・ロイス・ファントムVIII(英国仕様)

ソフトなサスペンション・チューニングと、大きなストロークが招く結果といえる。押出成形のアルミニウムを用いた、シャシーの大きさや重さも原因だろう。

大きなボディを、高剛性に仕上げることは簡単ではなく、振動の影響を排除することも難しい。タイヤが激しく動いた瞬間、ファントムVIIIのボディもかすかに震えてしまう。

もっとも、これが露呈するのは突出して厳しい条件にあった場合。同クラスの、乗り心地が追求されたモデルと直接比較しなければ、気にならないレベルではあるだろう。

フライングスパーの低速域での硬さと同様に、ファントムVIIIの路面との隔離性も、ライバルとの比較で表に出てくる重箱の隅をつつくようなものでしかない。全体としては、極めて快適なことは事実。この一部分だけに、注目しないで欲しい。

同時に、膨大な開発予算を投じたとしても、乗り心地には一定の妥協が伴うという事実も浮き彫りにしている。各ブランドが独自の解釈で快適性を定義しているが、2023年でも完璧さを得ることは困難なのだ。

最も乗り心地で平気点の高いリムジン

そしてこの比較で、最も一貫した乗り心地で驚かせてくれたのは、5台では1番お手頃なモデルだった。われわれが期待した通りの結果でもあった。威風堂々としたロールス・ロイスやベントレーではなく、バッテリーEVで最新のBMW i7だ。

低速域では枕のようにソフトでしなやか。路面を問わずボディはフラットに保たれ、落ち着きを失わない。座り心地の良いシートに乗員は身を預けられ、橋桁の継ぎ目などの鋭い入力も見事になだめていた。

BMW i7 xドライブ60 Mスポーツ(英国仕様)
BMW i7 xドライブ60 Mスポーツ(英国仕様)

乗り心地は、速度域に関わらず終始穏やか。最も平気点の高いリムジンといえた。

普段着姿の審査員数名で、2023年における極上の乗り心地を探求した今回。アグスタのヘリコプターに吊り下げて、ジョナサン・チャールズ・パーマー氏が持ち帰るべき1台は、BMW i7という結果になった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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