サーキットへ歩み寄り アルピーヌA110 Rへ試乗 ダウンフォース29kg増 車重34kg減

公開 : 2023.06.19 08:25

格上のスーパーカーを追い回せる動力性能を得たA110 R。その仕上がりを一般道で英国編集部が評価しました。

見た目のイメージチェンジは小さくない

ポルシェ911にはGT3が、BMW M3にはCSが追加された。ベースの仕上がりが素晴らしいだけに、カーボンファイバー製ボディキットに高性能タイヤが組まれた、サーキット仕様が用意されてもまったく不思議ではない。911 GT3では、エンジンまで別物だ。

アルピーヌA110にも「R」が追加された。しかし、上記の例ほどサーキット・フォーカスというわけではないようだ。サスペンションは、この手の仕様としては柔らかく、300psの最高出力は既存のA110 Sと変わらない。

アルピーヌA110 R(英国仕様)
アルピーヌA110 R(英国仕様)

ボディサイズはコンパクトで、車重は1082kgと軽量。確かにサーキットへ歩み寄っているが、一般道も存分に楽しめる特別な仕様といえるだろう。

A110 Rへ施された、見た目のイメージチェンジは小さなものではない。カーボン製ボディキットは、911 GT3のようにボディへ自然に馴染んではいない。

ボンネットとディフューザー、サイドスカート、スワンネックのステーで吊り下げられたリアウイングなどは、特別なアイテムであることを隠さない。ブラックのホイールも、専用のカーボンファイバー製となる。

物議を呼ぶのが、リアウインドウが存在した部分に与えられた、不透明のカーボン製カバー。運転席から、直接真後ろの様子を確認することはできない。

サーキットでの能力を求めるなら魅力的

これらのボディキットにより、最高速度では29kg増しのダウンフォースを得られるという。車内へ2脚据えられた、座り心地に優れるカーボン・シェルのサベルト社製バケットシートと合わせると、A110 Sから34kgの軽量化も果たしている。

ただし、今回の試乗車にはフォーカル社製のサウンドシステムが組まれていた。シートの後ろに、車重が増えるであろうサブウーファーが載っていた。

アルピーヌA110 R(英国仕様)
アルピーヌA110 R(英国仕様)

前述の通り、1.8L直列4気筒ターボエンジンの最高出力はA110 Sから変わらず。シャシー側では、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤと、フロントで10%、リアで25%剛性を増したアンチロールバーが与えられている。

サスペンションには、ザックス社製のコイルオーバー・ユニットが組まれる。車高は標準で10mmダウンし、調整式なため、さらに10mm落とすことも可能。減衰力は、伸張と収縮を個別に20段階で変更できる。

より優れたグリップ力と、シリアスな操縦性を得る内容だといっていい。これまでのアルピーヌとは、方向性が異なるレシピでもある。変化したドライビング体験に、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれない。

繊細で身軽な操縦性の虜になってきたドライバーなら、向上したグリップとの引き換えに、その特長が2割ほど減じたことへ気が付くだろう。反面、コーナリングスピードやライン調整の精度など、サーキットでの能力を求めるなら、一層魅力的に感じるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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