満ち溢れた時間へ没頭 BMW M2 クーペ G87型の6速MTへ試乗 大成功の仕上がり

公開 : 2023.06.21 08:25

英国では唯一となる、マニュアルのMモデル。M4と密接な関係性を持つ最新のM2を、英国編集部が評価しました。

従来以上にパワフル シャシーは熟成

近年は、欧州でも物価の高騰が激しい。自動車の価格も大幅に上昇しているが、便乗して余分に利益を得ているのではと、勘ぐってしまいそうになる。しかし、BMWは疑わなくて良さそうだ。

2016年に英国のショールームへ並んだ、先代のF22型BMW M2のお値段は約4万5000ポンドだった。インフレを加味し、2023年の価値へ換算すると約6万ポンド(約966万円)。当時は比較的お手頃といえ、英国では歴代のMモデルで最高の数が売れている。

BMW M2 クーペ・マニュアル(英国仕様)
BMW M2 クーペ・マニュアル(英国仕様)

最新のM2は以前にも増してパワフルで、熟成されたシャシーを得ている。それを踏まえると、6万5000ポンド(約1046万円)前後なら、納得できるといえるだろう。実際、このG87型BMW M2 クーペのお値段は、6万6090ポンド(約1064万円)からとなる。

ちなみに、6気筒エンジンと6速MTを搭載するポルシェ718ケイマン GTSは、7万ポンド(約1127万円)を超える。コンパクトなM2としては高く感じられるかもしれないが、この仕上がりを知れば、悪くない設定だと思う。

AUTOCARでは、既に新しいM2へ北米で試乗している。8速オートマティックが組まれていたものの、一般道で素晴らしい能力を披露してくれた。

巨大な魅力を生む3.0L直6ツインターボ

G87型M2は、現行のBMW M3やM4と密接な関係性を持っている。ボディサイズが大きくなり、車重も増え、小柄で身軽な特長を保てるのか危惧されたが、BMW M社は期待へ応えてくれた。拡大によるリスクは最小限に抑えられていた。

F22型M2が備えていた、自在に振り回せる凝縮感と弾けるように機敏な身のこなしは、確かに多少は犠牲になっている。しかし、姿勢制御は熟成度を増し、新採用のアダプティブダンパーを引き締めれば、乗り心地へ我慢すことなくタイトな走りに浸れる。

BMW M2 クーペ・マニュアル(英国仕様)
BMW M2 クーペ・マニュアル(英国仕様)

加えて、他のMモデルとは異なる個性もしっかり獲得している。大幅に短いホイールベースと、M社が煮詰めたサスペンションやステアリング、アクティブLSDによる相乗効果で、M4クーペに迫る以上ともいえる、快活な操縦性すら備わっている。

現代のMモデルとして不足ない正確性と洗練性を、カーブを攻め込まずとも体感できる。それでいて、M4より意欲的に扱って欲しいと、M2のシャシーは訴えてもくる。コーナーの出口で2速を選び、アクセルペダルを踏み込めば、すこぶる楽しい。

3.0L直列6気筒ツインターボ・エンジンは、回転域を問わず豊かなトルクを生成。レスポンスは鋭く、素晴らしく調律されたサウンドを伴いながらスピードを高める。このユニット自体も、巨大な魅力を生んでいる。

記事に関わった人々

  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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