ミニ・クーパーS
公開 : 2014.05.26 17:47 更新 : 2017.05.29 19:14
直噴とバルブトロニックとツインスクロールターボという3翻の役を持つこれは、運転モードによって特性を明確に変えるような仕立てがされていた。エコに相当するグリーンモードでは何が何でも過給圧を上げまいとしているようで、一方でスポーツでは過給のオーバーシュートを多用してアクセル操作に過敏すぎるほどの反応をする。万人に分かりやすい刺激性がニュー・ミニの基幹だったが、今回のエンジンはそれがさらに色濃くなっているのだ。
シャシー面において、その分かりやすい刺激性を与えるために、歴代ニュー・ミニは独特の操縦性を仕込まれていた。操舵時のフロント横方向ゲインの立ち上がりを強烈にする。これに対してリヤは徹底して踏ん張る。それは極端なまでにリヤ優勢の典型で、ステア操作で過敏にハナを振りつつ、左右に斜め移動する動きを得意とし、小さく回り込むような旋回は苦手としていた。3代目も基本的にはこれを踏襲するのだが、リヤの反応だけが違っていた。フロントに横方向ゲインが立ち上がると、間髪を入れずリヤが外に向かうのだ。これによって、初代と2代目に共通していたリヤの重厚は姿を消し、クルクルと小回りしたがるような印象が生まれている。
それでも最終的には挙動は安定方向にまとまるから、リヤの頑固さが薄れたことは同慶の至りなのだが、手放しには喜べない。リヤのアシ運びに不安感がつきまとうのだ。フロントの過敏な動きに反応してリヤに急峻な左右の荷重移動が発生してロールが始まる。このときリヤ内側輪の接地感があっさり消滅するのである。これはスポーツモードで電子制御ダンパーが締め上げられていると顕著になり、下り坂でも同様。路面不整に出遭ったときも跳ね上げられたあとに接地感が消滅する。常にリヤが薄ら寒い感じで走るシャシーなのだ。その一因ではないかと疑われるのは、荷重変化に対するグリップ感の変化が大きそうなハンコック製ランフラットタイヤ(ランフラットはオプション装着)。また分かりやすく極端に減衰力が上下する電制ダンパーにも一端はあると思う。伸び側まで硬めすぎる感じがあるのだ。
誰でもすぐに分かる濃いキャラクター──それはニュー・ミニを貫く商品コンセプトであり、それが支持されたからニュー・ミニは有卦に入った。だが、それは同時に懐の浅さという弱点を水面下に潜ませたものだった。その懐の浅さは、今度は件のリヤの薄ら寒さという形で水面上に浮かび上がってきた。
これはセッティング領域の話だから年次改良で好転する可能性が高い。だが現時点では3代目ミニは街乗り程度で加速と旋回の機敏を愉しむくらいで走らせたほうがよさそうなクルマである。
(文・沢村慎太郎 写真・花村英典)
ミニ・クーパーS
車両価格 | 332.0万円 |
0-100km/h | 6.7秒 |
最高速度 | 233km/h |
燃費 | 19.2km/ℓ |
CO₂排出量 | 122g/km |
車両重量 | 1240kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ, 1998cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 192ps/5000rpm |
最大最大トルク | 28.6kg-m/1250rpm |
馬力荷重比 | 155ps/t |
比出力 | 96.1ps/ℓ |
圧縮比 | 11.0:1 |
変速機 | 6段A/T |
全長 | 3860mm |
全幅 | 1725mm |
全高 | 1430mm |
ホイールベース | 2495mm |
燃料タンク容量 | 44ℓ |
荷室容量 | 211ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)マルチリンク | |
ブレーキ | (前)φ294mm Vディスク |
(後)φ259mmディスク | |
タイヤ | 195/55R16 |