ケータハム・スーパーセブン160
公開 : 2014.05.26 18:18 更新 : 2017.05.29 18:33
そう。これだこれだ。前も後ろも右も左も見渡す限りの青天井。フロントスクリーンは小さく、車体側面は乗り降りのために低く切り欠かれていて助手席側の地面もつぶさに観察できる。公園のベンチか何かが自走しているこの感覚。これに比べたら近代のオープンカーは巨大なサンルーフ装着車みたいなもんだ。そして走ればNVHの塊。レクサスLSの音振担当者に乗らせたら2分で発狂するのではないか。スーパーセブンは襲ってくるNVHを感覚から切り離し、機動そのものだけを掬い上げて悦に入る機械である──。などと愉しんでいないでレポーターとしての責務を果たさねばならない。
このクルマは去年から話題になっていたスーパーセブン160。スズキの軽自動車用3気筒ターボK6A型を積む黄色いナンバープレートのセブンだ。スズキから供給されているのはエンジンのみならず、クラッチ、変速機、デフを含むリヤアクスル、果ては前後のブレーキまでエブリイのそれを使う。ただしエブリイ用のK6A型は傾斜搭載なので、エンジンだけジムニー用のK6A型を使って直立させて積む。
エブリイの後車軸を適用した関係で、後輪トレッドが数cm狭くなり、全幅も軽規定枠に収まるように1470mmに狭められた。旧い基本設計ゆえ、もともとセブンは4輪が地面に描く四角形は縦長だったが、これでまた少し縦に長くなったわけだ。
そんな軽セブンを、記憶に擦り込まれている直4搭載の基準車と比べてみよう。発進はきわめて容易だ。アクセルを踏まないままクラッチをつないで簡単に転がり出す。車重が倍ほどあるもエブリイやジムニーのために切ったギヤ比はそのままだから、1速と2速のギヤ比が低すぎる感じで、車速の伸びよりもエンジン回転が先に追い越して行ってしまう印象だ。2速の次の3速との間も、やはり乗用車的に離れているのだが、結果として490kgの車重とエンジン性能との釣り合いがここでとれることになる。
というわけで、このギヤでエンジン性能を観察する。ブーストが立ち上がり切るインターセプト点は3000rpmを超えてからで、そこから6000rpmを超えるあたりまでトルクは平板に続く印象。つまりトルク推移に起承転結のドラマはない。ただし、試乗車は本来の80ps仕様のエンジンECUが間に合わなかったということで、軽自動車自主規制値64psのままの状態だった。本来の仕様であればもう少し過給エンジンなりの面白さが出るのではないか。