ブレーキダストの軽減、燃費向上も 排ガス規制「ユーロ7」に向けたブレーキ技術の進歩
公開 : 2023.06.12 21:05
2025年から欧州で施行される排出ガス規制「ユーロ7」には、単に排出ガスだけでなく、ブレーキやタイヤからの微粒子の発生低減も盛り込まれています。電動化と合わせたブレーキ技術の進歩について紹介します。
厳しい環境規制に対応 鍵は「残留トルク」
2025年7月に欧州で施行される排出ガス規制「ユーロ7」は、これまでで最も厳しいものであると同時に、その適用範囲は通常のマフラーからの排出ガスにとどまらず、EVも含まれている。
世界で初めて、自動車、小型商用車、トラック、バスは、ブレーキとタイヤから排出される粒子状物質の規制を受けることになる。ブレーキの場合は、ブレーキから発生する微粒子(ブレーキダスト)、タイヤの場合は、タイヤの摩耗に伴うマイクロプラスチックの発生がこれにあたる。
今のところ、タイヤメーカーがどのようにマイクロプラスチックを削減しようとしているのかは不明だが、摩耗速度を遅くすることで一定の効果が見られ、他の利点もある。しかし、ブレーキに関しては、部品メーカーがすでに先手を打ち、まったく新しい技術をいくつも導入しているのだ。
その一例が、2022年末に発表された新しい排出ガス規制案を受けて、コンチネンタルが発表した「グリーンキャリパー」である。このグリーンキャリパーには2つの利点がある。
1つはブレーキダストを低減すること、もう1つはエネルギー消費を抑えて航続距離を伸ばすことだ。鍵となるのは残留ブレーキトルクの低減である。通常、油圧ブレーキキャリパーは、ブレーキが解除された後も、パッドがディスクの上でわずかに引きずってしまう。これをブレーキの残留トルクなどと呼ぶ。
グリーンキャリパーでは、パッドとディスクの間の残留ブレーキトルクが0.027kg-m以下と低く、実質的にロスがないと言える。コンチネンタルのブレーキバイワイヤシステム「MK C2」と併用され、残留トルクの低減に必要なパッドとディスクの間のクリアランスを考慮しているため、ドライバーはブレーキペダルの緩みや感触不足を感じることはないという。
EVのブレーキには、回生ブレーキと従来のファウンデーションブレーキ(摩擦ブレーキ)の2種類がある。コンチネンタルによれば、グリーンキャリパーは減速の80%以上でファンデーションブレーキが不要であることを考慮し、特別に設計されているとのこと。
急停止の際には制動力を発揮するが、ブレーキの熱負荷がはるかに低いため、従来のクルマのように大きな仕事をすることはないのだ。
その結果、キャリパーはコンパクトになり、パッドも摩耗が少ない分、小型・薄型化された。ディスクの上部をまたぐ部分も薄くなった分、ディスクの直径を大きくすることができ、同じ踏力で大きな制動力を得られるようになった。
全体的に、従来のブレーキシステムより1組あたり5kg軽量化されていると言われ、これによって航続距離が伸び、またバネ下重量が軽減されることでハンドリングの向上も期待できる。
グリーンキャリパーが発表されたのは2022年だが、2~3年後には車両に搭載できるようになるとされていた。