アストン マーティン 市販車にも「F1文化」活きる 技術責任者が語る次世代車開発の行く末は

公開 : 2023.06.13 06:25

昨年、アストン マーティンの最高技術責任者に就任したロベルト・フェデリ氏は、F1の文化が市販車に反映されると語ります。メルセデス・ベンツとの関係、若い人材の育成などについても話を聞きました。

ラ・フェラーリを手掛けた重鎮

1年前、アストン マーティンの最高技術責任者にロベルト・フェデリという人物が就任した。

イタリア人のフェデリ氏は、これまでフェラーリで26年間キャリアを積み、ハイパーカーのラ・フェラーリの開発を指揮した後、BMWとFCAで経験を重ねてきた。アストン マーティンに移籍したのは、同氏がフェラーリ在籍時と同じCEOに就任するアメデオ・フェリサ氏と同時期であった。

次期ミドエンジン車は「非常にエキサイティング」なものなるという。
次期ミドエンジン車は「非常にエキサイティング」なものなるという。

フェデリ氏がアストン マーティンの最高技術責任者として約800人のエンジニアを統括し、初めてリリースしたのが新型DB12である。

AUTOCARは彼に独占インタビューを行った。

――1年前に移籍したとき、ローレンス・ストロール会長からどのような説明を受けましたか? また、最初の経験をどう受け止めたのでしょうか?

「ブランドの新しいDNAに従って製品を変えるように、というのがローレンス(会長)からの指示でした。このブランドの『intensity.driven.』という新しい定義は、技術や車両部品の仕様の面で、より明確に定義する必要がありました」

「チームは1年前に、若い才能をうまくミックスして作られました。アストン マーティンには若く有能な人材がたくさんいますが、わたしは彼らの意見に耳を傾け、開発、プロセス、製品に新鮮さを与える機会を与えてきました。すでに豊富な経験を積んでいる人たちと一緒に、若い才能と経験で面白いチームを作っています」

「今年のわたしの目標は、このチームがベストを尽くし、互いに話し合い、政治や時間の浪費をせずに製品について考え、日々飛躍して改善していくことです」

「これはF1チームの文化であり、毎日、競争相手より10分の1秒速くなるために努力するのです。また、自分たちは単なる島と考えるのではなく、周囲を見渡し、ライバルと比較することで、ベストを目指すようになったのです」

「わたし達は、これからたくさんの製品を発表します。わたし達が製品、方法論、プロセス、共同作業で学んだことはすべて、これから登場するさまざまな製品に反映されるでしょう」

若い才能の育成 ブランドの魅力

――未来の才能を育てることは、あなたにとってどれほど重要ですか?

「わたしの目標は、純粋なアストン マーティンの若い才能を磨き、伸ばすことです。彼らが5~7年後に製品開発をリードしてくれることを願っています。アストン マーティンでは、以前はさまざまなリーダーがいましたが、次の新しい技術責任者はアストン マーティンから誕生するでしょう」

ロベルト・フェデリ最高技術責任者
ロベルト・フェデリ最高技術責任者

「第二の目標は、アストン マーティンの未来を守るために、強力で有能な技術者チームを作ることです」

――アストン マーティンのどこに魅力を感じたのでしょうか?

「これほどエキサイティングなプロジェクトは、世界でも他にないと思うんです。過去を尊重しながら、ブランドは全く違う方向に向かっていく。適切な製品と収益性が必要であり、約束したことを実現しなければならない。それが、ローレンス・ストロールのもう1つの目標です」

「それを実現すれば、会社は完全に変わります。そうすれば、株式の価値も上がり、思い通りのビジネス展開ができるようになります」

「わたしがローレンス・ストロールの提案を受けた理由は、会社の価値を高めるために、価値創造に貢献したいからです」

「スポーティな高級車ブランドにとって、価値は製品と非常に密接な関係にあります。適切な製品があれば、価値を生み出すことができる。製品を作って売り、お客様を満足させてまた買ってもらうことで、より多くのお金を得ることができるのです」

――なぜ、DB12から自社でソフトウェア開発を行うようになったのですか?

「そうせざるを得ないのです。そうしないと、管理できないマーケットがたくさん出てくる可能性がある。そして、他の誰かに導かれ、他の誰かに管理されるのです。すべてのメーカーがそうしています。わたし達は最後の1社です。しかし、やらなければならないのです」

「これは、わたし達が抱える最大の課題の1つと言えるかもしれません。英国でソフトウェアに携わる人の数は決して多くはなく、人材の確保に苦労しています。大学やスタートアップ企業と協力し、最高の人材を確保するための協定を結んでいます」

「長い道のりです。今までに雇いたいと思っていた人たちの50%を雇いました。少なくとも100~150人の人材が必要ですが、英国では優秀な若者を見つけるのに苦労しています。ソフトウェアはすべてのビジネスにとって重要なので、誰もが彼ら(ソフトウェアエンジニア)を求めているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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