最高に面白かったル・マン24時間 でも「本物」のレースと言えるの? 複雑な思いが残る試合

公開 : 2023.06.13 18:05

今年のル・マン24時間は、非常に競争が激しく面白いレースでしたが、筆者には複雑な思いが残りました。BoPやセーフティカーなど、ルールには純粋に納得しづらい部分も。100周年の伝統イベントを振り返ります。

手に汗握った白熱のレース展開 …しかし葛藤も残った

100周年を迎えたル・マン24時間レースは、1965年以来となるフェラーリの完全制覇をはじめ、過去最高のレースが展開され、筆者も大いに魅了された。しかし、複雑な思いが残るレースでもあった。

ル・マン24時間は非常に競争が激しく、エンターテインメント性も高い。序盤のトップ争いは、まるでツーリングカーレースのような激しさだった。混乱を招くようなにわか雨もあり、アクシデントも相次いだ。

ル・マン24時間100周年大会は非常に面白いレースだったが、すっきりしない部分もいくつかある。
ル・マン24時間100周年大会は非常に面白いレースだったが、すっきりしない部分もいくつかある。

さらに、ジェームス・カラド、アントニオ・ジョビナッツィ、アレッサンドロ・ピエール・グイディのフェラーリ499Pと、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のトヨタGR010ハイブリッドの優勝争いは、残り90分でが平川がブレーキをロックさせてアルナージでバリアに滑り込むまで決着しなかった。

フェラーリの勝利が大きな話題となるのはもちろんだが、近年、他のメーカーが手を挙げなかったル・マンに多大な貢献をし、数多の戦いを勝ち取ってきたトヨタに同情しないわけにはいかない。

なんという戦いであろうか。22時間以上のレースの末に平川がスリップしたとき、上位2台の差は20秒を切っていた。奥深い強さも見られた。キャデラックの強さ、プジョーの意外な挑戦、ポルシェ勢の速さ……。

あらゆる意味で、レースは大成功であった。来年はさらに多くのメーカーが参加する予定だ。しかし、1つだけ気になることがある。このレースはどのくらい「本物」だったのか?

車両間の同等性を確保するためにハイパーカーのトップカテゴリーで採用されているBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)ルールに不満の声があがっている。注目すべきは、トヨタがレース直前に重量増を余儀なくされたことだ。それが違いを生んだのだろうか。

純粋な視点に立てば、簡単には納得できない。最高の仕事をしたチームは報われるべきであって、ペナルティーを受ける必要はないように思える。しかし、これがルールなのだ。今年のル・マンに多くのメーカーが参加したのも、BoPルールによって競争力を確保することができたからだ。

もう1つ争点となっているのは、米国のスポーツカーレースから導入された複雑なセーフティカー・ルールで、フィールドを束ね、状況をよりタイトなものにする役割を果たした。これは、ル・マンの純粋なスポーツ競技としての評価とは相反するものである。

そのようなわけで、筆者は少し葛藤している。今年のル・マンは、各メーカーが互いの力を最大限に発揮し、コース上で決着をつけた素晴らしいレースだった。BoPの善し悪しにかかわらず、各チームとも、スタート時の立ち位置がわかっていた。そしてル・マンでの勝利は、とにかく最速かどうかで決まることはほとんどない。

それでも、ル・マンで伝統的に行われてきたような、純粋なスポーツ・コンテストだったのだろうか。それはわからない。あんなに楽しませてくれたのに、それは重要なことなのだろうか。それもよくわからない。皆さんのご意見をお聞かせください。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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