好バランスなBEV アウディeトロンGT 長期テスト(2) コンチGTやM8との比較

公開 : 2023.06.24 09:45  更新 : 2023.08.03 15:57

ポルシェと技術共有するアウディの高性能EV、eトロン GT。英国編集部が日常使いすることで、その能力を掘り下げます。

積算4585km かなりお高い現在の電気代

これまで4000km以上を走破したが、アウディeトロンGTはかなり快適。スムーズで気持ちが良い。ただし、現在の電気代はかなり高い。レシートを確認すると、北部のエディンバラまでの往復、約1280kmで202ポンド(約3万5000円)も充電に支払った。

筆者が利用したのは、アイオニティ社が展開する充電ステーション。短時間で完了できるのが強みだが、1kWh当たりの料金は0.74ポンド(約130円)と、かなり高額。BMW M5 コンペティションに必要なハイオクと、同じくらいの金額がかかる。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

積算6064km 扱いやすさと操縦性の精度へ感心

この2週間ほどで、様々なモデルへ試乗させてもらった。ベーシックなトヨタヤリスから英国価格25万ポンド(約4375万円)超のベントレーランチア・インテグラーレ、後輪駆動のテスラモデルY、BMW M8 コンペティションと、ラインナップは幅広い。

中国からやってきた、オラ・ファンキーキャットのステアリングホイールも握った。アウディeトロンGTと距離が空いたことで、改めて新しい発見を得ることができた。今まで見逃していた、ともいえるだろう。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロとベントレー・コンチネンタルGT
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロとベントレー・コンチネンタルGT

一般的なコンパクト・ハッチバックと乗り比べれば、eトロンGTはボートのように大きい。しかし、ベントレー・コンチネンタルGTの後に運転してみると、扱いやすさや操縦性の精度に改めて感心させられた。

同時に、低速域ではW型12気筒エンジンで走るベントレーと同じくらい穏やかでもある。高速道路では、荘厳な風格のようなものは薄いかもしれないが、スポーティなアウディとして悩ましいポイントではない。

eトロンGTへ潤沢に投じられた技術と、優れた操縦性という組み合わせが気に入っている。とてもバランスが良いと思う。

快適な乗り心地とニュートラルなバランス

BMW M8 コンペティションは、恐らく最近試乗したなかではeトロンGTへ一番近いモデルだといえる。もし筆者が自身の予算でこの2台から選ぶなら、eトロンGTにするだろう。深く悩むことなく。

M8 コンペティションには、最高出力625psを発揮する、素晴らしいM5譲りのドライブトレインが搭載されている。最近では珍しい、滑らかなルーフラインを描くビッグクーペのシルエットを備えている。クルマ好きの多くへ響くレシピだといえる。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

eトロンGTのように、充電スタンドを探す必要もない。1度ガソリンタンクを満たせば、600km以上余裕で走ることもできる。それでも、自ら選ぶならアウディの方だ。

その理由の1つといえるのが、非常に快適な乗り心地にある。それでいて、姿勢制御も素晴らしい。

加えて、ステアリングホイールの感触はクリア。BMWのようにアクセルペダルの加減でコーナリングラインを調整することは難しくても、ニュートラルなバランスで、それを補っている。

M8 コンペティションは、シリアスな高性能クーペとラグジュアリーなグランドツアラーという組み合わせで、苦労している印象がある。他方、eトロンGTはまとまりがイイ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アウディeトロンGTの前後関係

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