自衛隊「高機動車」 ロシアが戦争に使用か 背景に解体業者「抜け穴」
公開 : 2023.06.15 11:54 更新 : 2023.06.15 12:01
自衛隊で使用されていた「高機動車」をロシアが戦争に使用している可能性が高いです。背景を追いました。
もくじ
ー数か月前「KOKIDOSHA」今は「メガクルーザー」
ー高機動車とはどんなクルマなのか?
ーロシアの中古車サイトに「注意書き」
ー国会答弁に立った防衛装備庁の土本長官
ー自衛隊車両の解体はザルだらけ?
数か月前「KOKIDOSHA」今は「メガクルーザー」
自衛隊で使用済みとなった車両は民間への払い下げが禁止されており使用済み車両は再利用できないよう、破砕(溶解)をして鉄くずとして処理する規則がある。かつては解体された部品を集めて再度組み立ててマニアが趣味として所有しているケースもあったが現在はそれも厳しくなっている。
公道を走れる車両としてナンバーを取得することなどは100%ありえないし、クルマの形で海外に持ち出されることも不可能なはずだ。
しかしながら、ロシアで展開する複数の中古車サイトでは「トヨタ・メガクルーザー」として自衛隊で使用済みとなった複数の高機動車が販売されている実態がある。
実は数か月前までは、これらの多くは「KOKIDOSHA」(高機動車)として販売されていた。現在は筆者が探した7〜8台の中には「KOKIDOSHA」として販売されている車両はなかった。
事情通によると今年4月頃から「トヨタ・メガクルーザー」として販売されるようになったそうだ。なぜ、メガクルーザーなのか? 詳しくは後述するが、2023年3月に日本の国会(安全保障委員会や衆院外務委員会)にて何度か高機動車に関する質問がおこなわれたことに関係している可能性が高い。
発端となったのは2022年11月にウクライナのテレグラムサイト「NMTE」に投稿された写真である。写真にはロシア軍で日本国自衛隊が使用していた車両が軍事車両として使用されているという説明がついていた。
その後、動画共有サイトでは実際に高機動車とみられるロシア軍の車両が複数台連なって走行するシーンを撮影した動画も流れている。
どうみても、日本の自衛隊で役目を終えた高機動車にしか見えない車両がウクライナを攻撃するロシア軍の車両として使われているわけだが、車両を管理する防衛装備庁は「自衛隊で使われている高機動車に外観は似ているが確実な証拠がない」としてこれを否定している。
高機動車とはどんなクルマなのか?
高機動車とは1990年代前半から普通科連隊を中心に配備が始まった車両で、本来の目的である人員輸送やトレーラーの牽引の他、対空ミサイルや対戦車ミサイルなどの搭載も可能な汎用性の高い車両としても知られる。
もちろん、圧倒的な信頼と悪路走破性を誇るトヨタ製の四輪駆動車であり、最低地上高も42cmを確保しているから日本の自衛隊では使用済みとなっていても必要な地域では手に入れたいクルマなのだろう。
トヨタ・メガクルーザー(UBX20)をベースに開発されているため高機動車の型式番号は「UBX10」(トヨタ製15B型搭載)、「XCD10」(日野製N04C型搭載)となる。トヨタ自動車が開発し日野自動車にて製造されてきた。
これまでに約4300台が自衛隊に納入されており2023年2月末現在でうち1800台が使用済みとなっている。
高機動車と民生用のメガクルーザーの違いは明確だ。高機動車の後部は幌型となっており、前席以降は荷台に向かい合わせで4名×2列のシートが配置され最大8名が座れる仕様となっている。
これに対して民生用メガクルーザーは幌型ではなくクローズドボディのSUVで前列に運転席/助手席、後列に4席分が横に配置されている。
決定的な違いは4.1Lディーゼルターボエンジンの違いだ。前述したようにエンジンの違いで型式番号も異なる。高機動車は2003年度までトヨタ製「15B」型を搭載していたが排ガス規制の段階的な強化に対応し2004年度以降は日野製の「N04C」型に切り替えている。いっぽう、2001年で生産を終了したメガクルーザーは15B型のみだ。
ロシアでメガクルーザーとして販売されている高機動車の中には搭載エンジンが「N04C (common- rail, turbo)」と記載されているものもあるが、これはメガクルーザーには搭載されるはずのないエンジンである。
さらに注目すべきはロシアの中古車サイトに出ている高機動車のページにある「注意書き」だ。