自衛隊「高機動車」 ロシアが戦争に使用か 背景に解体業者「抜け穴」
公開 : 2023.06.15 11:54 更新 : 2023.06.15 12:01
自衛隊車両の解体はザルだらけ?
土本氏の答弁に対して鈴木委員は予備自衛官をしていた経験から、「ヘッドライトの横についている管制灯火ランプの穴を見ても、どう考えても高機動車でメガクルーザーではない」と詰めた。
しかし、その後の土本政府参考人の答えは同じことの繰り返しで、「外観上は似ているが防衛省/自衛隊と特定できるものは全て取り外して業者に分解、破砕させているので確認できない」との回答だった。
おそらく現在も廃棄車両については防衛省、防衛装備庁などがこれまでに高機動車を売り払った全国25社の業者に対して確認をおこなっていると思われる。
高機動車をはじめ自衛隊で使用済みとなったすべての車両は再利用して市場に流通させないための厳格な規則がある。
陸上自衛隊では転売や再利用を確実に防ぐため、平成30年と令和4年に関連規則の改正をおこなっているとのことだが、高機動車は戦車などの完全な戦闘用の車両に比べると解体時の処理については実際にはそれほど厳しくはない、という情報もある。
「使用済み車両」に関する陸上自衛隊の仕様書には転売の禁止や引渡車両の解体/処分要領などが定められているが、これをまとめると以下となる。
・外観から自衛隊車両と判別できる車両のキャビン、ボディなどの外装部品、フレームは一切転売禁止
・使用済み車両を落札した業者は車両を引き渡した3か月以内に規則に従ってプレス、せん断処理または電炉等における溶解まで実施
・車台番号ごとに破砕または溶解後15日以内に撮影した工程写真を添付
・車台番号の断片確認が困難な場合には官側の現地確認を受ける
高機動車も使用済みとなればこれらの規則に従ってバラバラに破砕または溶解されるべきであり再利用はもちろん、ロシア軍が使用する車両として販売されることなどあってはならないことである。
しかし、自衛隊車両の解体もおこなっているとある解体業者は驚きの実態を語ってくれた。
「バラバラにされたパーツが輸出されて海外で組み立て車両として再利用しているなんて話は以前からありましたが、高機動車は戦車と違ってここまで細かくしませんよ」
「自衛隊のバッジやナンバーをはずして車台番号をわからなくすればOKでは? 川崎や横浜など首都圏の港は監視の目が厳しいですが、地方の港だったら……」
「提出が義務付けられている破砕溶解後の写真も、他車のものを使い回してるんじゃないですか?」
日本国民の税金で購入され、日本の自衛隊で使われていた車両がウクライナを攻撃するためにロシア軍で使用されている……。
悪夢としか言いようがない。引き続き防衛省や関係者に取材を進めて事実を明らかにしていきたい。