豊田会長、BEVの「GR」プロトタイプに試乗 エンジン車に近い感覚、MTも搭載か

公開 : 2023.06.15 19:45

豊田氏は、GRのテスト車両があくまでプロトタイプであること、そしてその開発が新しいアイデアへの挑戦の姿勢を示すものであることを強調した上で、次のように語った。「市場に出るかどうかは別として、BEVになっても失ってはいけないものは何かということを追求したのが、このクルマです」

「これはトヨタが、社員が面白そうなアイデアを検討し、そのアイデアからクルマを作り、走らせて見せる会社に変わった例だと胸を張って言えます」

豊田章男会長はクルマとモータースポーツの大ファンとして知られている。
豊田章男会長はクルマとモータースポーツの大ファンとして知られている。

また、豊田氏は、このクルマは外見からBEVに見えるとし、独自の専用モデルではなく、新型車をベースにしている可能性を示唆した。2021年、トヨタは2025年までに15種類の新型BEVを発売し、2026年までにBEV販売台数150万台を達成することを約束した。昨年、その最初のモデルであるbZ4Xが安全上の問題でリコールされたものの、2万6000台のBEVを販売した。

GR BEVは、今週初めに別途発表された新しいバッテリーを利用することになりそうだ。豊田氏はこの可能性についてコメントしなかったが、トヨタの声明によると、同社は2026年から次世代リチウムイオンバッテリーを使ったモデルの製造を開始し、エネルギー密度の高い全固体電池による「技術的ブレークスルー」により、2027~28年には性能をさらに一段階向上させ、10分間の充電で最大1200kmの航続距離を持つ量販車を実現できる可能性があるという。

しかし、この全固体電池技術には当初、価格面で大きなプレミアムがつくと予想されている。そのため、レクサスLFAの後継車である「エレクトリファイド・スポーツ」コンセプトの市販モデルなど、象徴的なハイエンドモデルから採用される可能性が非常に高い。

これに対して、GRのモデルはこれまで、比較的手頃な価格帯に焦点を当ててきた。そのため、現在開発中のクルマには、より低コストの次世代リチウムイオンバッテリーが採用される可能性が高い。

コストの低下と普及が進むにつれて、全固体電池がトヨタの各モデルに順次導入されていくことが予想される。しかし、小さなバッテリーで高い性能と長い航続距離を実現できる可能性があることは、電動スポーツカーにおける重要な利点と見られる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事